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金正恩、凋落の始まり (12)

正恩氏、肝いりリゾート予定地視察 ホテル増設など指示

北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が、リゾート開発を進めている日本海側の江原道(カンウォンド)、元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区の建設現場を視察した。 労働新聞(電子版)が 17 日付の 1 面で報じた。 映像では、来年 10 月までの完成を目指す建築群が徐々に姿を現している。

同紙の写真や地図によれば、同地区は海岸沿いに、20 以上の建物群の建設が進む。 正恩氏は「自分が一番やりたかった事業のひとつ」と喜び、25 階建てや 30 階建てのホテル、商業施設などを増やすよう指示。 「世界に二つとない海洋公園を建設して、来年の 10 月 10 日(党創立記念日)に人民にプレゼントしよう」と力説したという。 視察には妻の李雪主(リソルチュ)氏も同行した。 同地区は正恩氏が現在、最も力を入れている事業とされる。 朝鮮中央通信は 5 月 26 日にも正恩氏が同地区を視察したと伝えている。

韓国の専門家によれば、同地区は米フロリダ州のビーチ施設を参考にした可能性があるという。 正恩氏は 6 月の米朝首脳会談でシンガポールを訪れた際、リゾート施設「マリーナ・ベイ・サンズ」を視察。 夜景を眺めながら「きれいで美しい。 様々な分野でシンガポールの知識と経験を学びたい。」と語った。 トランプ米大統領も首脳会談後の記者会見で、「彼らはすばらしい海岸を持っているのに、いつも海に向かって砲撃している」と述べ、正恩氏に対して「そんなことをする代わりに、世界一のホテルを持ったらどうだ」と持ちかけたと明かしている。

だが建設は必ずしも順調ではないようだ。 正恩氏は 1 月の新年の辞で「今年、建設を最短期間内に完工する」と訴えた。 北朝鮮関係筋によれば、9 月 9 日の建国 70 周年の完成を目指していたが、制裁による経済難で断念したという。 視察の際に正恩氏は、工事現場の秩序を維持し、労働安全対策をしっかり立てて事故が起きないよう関係者に指示した。

正恩氏は同地区の建設について「制裁、封鎖でわが人民を窒息させようとする敵対勢力との対決戦だ」と指摘。 「全てが困難な時期に大規模の工事が世界的文明を圧倒して完了すれば、党と軍隊、人民の一心団結の威力が世界にあらためて誇示される」と激励した。

韓国・世界北韓研究センターの安燦一(アンチャンイル)所長によれば、5 月 12 日に脱北者と話した北朝鮮両江道住民が同地区の建設の現状について「国に金がないので、企業などが建設資金を国に差し出している」と証言した。 この住民は「最近、建設現場で火災が起きて約 40 人が死んだ」とも説明したという。 工期短縮のため、労働者は睡眠時間が 1 日 2 時間しか取れず、電気のショートで火災が起きても眠っていたため、気づくのが遅れたという。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2018 年 8 月 18 日 -


北朝鮮のカジノホテル、中国からの抗議で工事中断

北朝鮮が、中国との国境に面した平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)で建設中だった 30 階建てホテルの工事が中断された。 この話を巡って、「あの人物」との関連が取り沙汰されている。 米政府系のラジオ・フリー・アジア (RFA) は、RFA は現地の情報筋の話として、このホテルは今年の春に着工、骨組みが 20 階まで組み上がった時点で突然工事が中断されたと報じた。 国境の鴨緑江を挟んで向かい合う中国の丹東のマンションの 15 階以上から見ると、ホテルの建物の一部が見えるという。 これは、鴨緑江の川べりではなく、そこから 1 キロほど離れた市内中心部で工事が行われていることを示す。

工事中断の理由はカジノだ。 このホテルには大規模なカジノが併設されると伝えられているが、それを知った中国政府が異議を唱え、工事が中断したという。 「自国民のギャンブルに頭を痛めている中国政府の立場からすると、丹東から川さえ渡ればすぐのところにカジノを作られるのは認めがたいことだろう。 毎年、中国人が天文学的なカネを海外でのギャンブルで無駄にしていることを考えると、中国政府が問題視するのは当然のこと。(情報筋)」

北朝鮮のカジノと言えば、エンペラーホテルが知られている。 これは、香港のエンペラーグループが 2000 年 7 月に、北朝鮮北東部の羅先(ラソン)経済特区にオープンさせたものだ。 ところが、ここに中国の高官が入り浸っていることが大問題となった。 吉林省延辺朝鮮族自治州の蔡豪文交通運輸管理処長が、このホテルのカジノで、21 回に分けて公金 318 万 5,500 元(当時のレートで約 4,100 万円)をすってしまったことが明らかになり、蔡処長は裁判で懲役 17 年の判決を受けた。 カジノは中国政府の要求で閉鎖に追い込まれた。 中国政府としては、自国の目と鼻の先にカジノを作られてはたまらないのだ。

金正恩氏は最近、新義州を訪れ開発計画に関する現地指導を行ったが、その直後に中国の横槍でカジノホテルの建設が中断し、冷水を浴びせかけられた形となった。 一方、ホテルを巡ってはある人物の名前が取り沙汰されている。 楊斌(ヤン・ビン)氏だ。 オランダ国籍の華僑の彼は、花卉(かき)ビジネスで財を成し、2002 年 9 月には北朝鮮が新設した経済特区、新義州特別行政区の行政長官に任命された。 しかし、本格始動を前にして中国当局は彼を脱税容疑などで逮捕、裁判で懲役 18 年の判決を下した。

当時、彼が逮捕されたのは新義州でのカジノの運営に手を出そうとしたからという噂が立ったが、それから 20 年近く経ってもこの噂は根強く残り、今回のホテル建設にも彼が絡んでいるとの噂が立っていると、現地の別の情報筋が伝えた。 満期出所を待たねばならないとしたら、彼はまだ獄中にいるはずだが、既に釈放されたとの情報もある。

台湾の国民党の金庫番だったと言われている劉泰英氏は今年 6 月、台湾の東森テレビの番組で、今年 5 月に北京で 2 回楊斌氏に会い、新義州の共同開発を持ちかけられたと主張した。 劉氏は、金正恩氏が行政長官に楊斌氏を再任命したとも主張した。 一方、蘋果日報は今年 10 月、楊斌氏と劉泰英氏が台北市内のレストランで食事をしたときに撮影されたとする画像を公開している。 (高英起)

- Daily NK 2018 年 11 月 24 日 -


数千億円? 正恩氏の資金「枯渇し始めるかも」

トランプ米大統領への「親書攻勢」によって、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は具体的な非核化に踏み出さずに、2 回目の首脳会談開催の合意を勝ち取った。 ただ、トップ同士の取引で事態の打開を図ろうとする背景には、国際社会の経済制裁の影響で厳しさを増す経済状況があるようだ。 「正恩氏の政治資金が、今年の上半期にも枯渇し始めるかもしれない。」 韓国の北朝鮮経済の専門家の間では最近、こんな可能性がささやかれている。

政治資金とは、党や軍などの幹部に贈り物などを渡し、忠誠を誓わせる統治のためのお金だ。 専門家の分析では、計 30 億 - 50 億ドル(約 3,300 億 - 5,500 億円)あるといわれるが、制裁の影響で減り続けているとみられる。 輸出などで外貨を稼ぐ力も弱まっている。 韓国貿易投資振興公社 (KOTRA) によると、2017 年の北朝鮮の輸出額は約 17 億 7 千万ドル(約 1,960 億円)で、前年比 37.2% 減少。 18 年はさらに落ち込む見通しだ。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2019 年 1 月 20 日 -

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