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金正恩、凋落の始まり (11)

「安倍と手を切れ」、「ウェイトレス返せ」金正恩氏が韓国を脅迫

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は 29 日、中国の北朝鮮レストランから脱出し韓国に亡命した女性従業員 12 人の送還が、南北対話継続の「先決条件」であるとする論評を配信した。 ときにアイドル並みの美人ウェイトレスが人気を博してきた北朝鮮レストランの問題は、韓国でも関心が高い。 韓国政府としては悩ましい要求である。 2016 年 4 月に発生した女性従業員らの集団亡命を巡っては、韓国の朴槿恵政権(当時)の工作による「企画脱北」であったとの疑惑が提起されている。

これを受けて論評は、「朴槿恵逆徒の反人倫的犯罪を庇護し、隠ぺいしようとするなら、それは積弊清算を願う南朝鮮民心に対する露骨な反逆であり、板門店宣言の履行に逆行する重大な犯罪行為である」と強調し、これまでのところ送還を拒否している韓国側に揺さぶりをかけた。 北朝鮮当局は脱北者を懐柔、あるいは拉致して国内に連れ戻す作戦に力を入れてきた。 仮に韓国政府が送還に応じたら、まさに「大戦果」である。

同通信はこの日さらに、韓国政府に日本との軍事情報包括保護協定 (GSOMIA) が南北首脳会談で発表された「板門店宣言」履行の「障害物」であるとする論評も出した。 GSOMIA は日韓初の防衛協力協定として、歴史問題などとからみ韓国世論の反発を受け交渉が難航。 朴槿恵前政権が 2016 年 11 月 23 日、ソウルの韓国国防省において非公開で両国の署名式を行い、「密室批判」を受けた経緯がある。 現在の文在寅政権も協定を継承しているが、戦争反対平和実現国民運動など一部の進歩系市民団体が、破棄を要求して署名運動を展開している。

いま、韓国政府がこれに応じたら、日韓関係に与える打撃は計り知れない。 目下のところ、韓国政府が GSOMIA 破棄に応じる可能性はきわめて低いが、女性従業員の送還問題では微妙な空気も漂っている。 逆に韓国側には、北朝鮮を効果的に揺さぶるカードが見当たらない。 「米朝対話を仲介しない」と脅すことはできても、それでは文在寅政権が掲げる対話路線が破たんしてしまう。 今後もしばらく、韓国政府は北朝鮮の金正恩党委員長によって、難しい立場に立たされ続けると思われる。 (高英起)

- Daily NK 2018 年 5 月 30 日 -


「朝日新聞の謀略記事、許さない」北朝鮮が名指しで批判

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は 8 日、朝日新聞と同紙ソウル支局長を名指しし、北朝鮮と金正恩党委員長のイメージを傷つける報道に対しては「必ず高価な代償を払わせる」とする論評を配信した。 朝日新聞のソウル支局長は、北朝鮮問題で「特ダネ」を連発していることで知られる。 最近では、北朝鮮国内で 4 月、金正恩氏が涙を流す場面を収めた記録映像が上映されたとする記事が同紙 5 月 30 日付朝刊の 1 面トップで掲載された。

論評は、同支局長が「われわれの最高の尊厳をあえて冒とくし、朝鮮を悪らつに誹謗、中傷した謀略記事を書いた」としながら、具体的にどの記事が「謀略記事」に当たるか明示していないが、金正恩氏に直接言及した内容が北朝鮮当局を刺激した可能性がある。 同通信は、この機会に「日本の対朝鮮謀略家と『朝日新聞』に厳重に警告する」として、「わが国家の尊厳あるイメージをダウンさせようと愚かにのさばる者に対しては、島国に住もうと、大洋向こうのどこにいようと絶対に許さず、必ず高価な代償を払わせるであろう」と威嚇した。

- Daily NK 2018 年 6 月 9 日 -


金正恩氏の「処刑部隊」が庶民の攻撃受けタジタジ

北朝鮮当局が進めている「非社会主義的現象」の取り締まり。 一種の風紀引き締め策だが、これに対して住民が集団で抗議する事態が発生したと、両江道(リャンガンド)のデイリー NK 内部情報筋が伝えてきた。 ちなみに非社会主義的現象とは、文字通り北朝鮮が標榜する社会主義の気風を乱すあらゆる行為を指す。 たとえば賭博、売買春、違法薬物の密売や乱用、韓国など外国のドラマ・映画・音楽の視聴、ヤミ金融、宗教を含む迷信などなどだ。 もちろん、その他の刑事事犯も含まれる。

道内の恵山(ヘサン)では 6 月初め、保衛部(秘密警察)が住民を集めて「非社会主義検閲総和」が行われた。 つまり、取り締まりの最後に行われる総括だ。 この場で異例の事態が発生した。 ある人は検閲(家宅捜索)を受けなかったのに、別の人は検閲を受けて中国人民元で 1 万元(約 16 万 7,000 円)以上も押収されたこと、一部の人に手心が加えられていたことが暴露された。

すると、「奪うなら平等に奪え」などと集団で抗議する人が続出し、騒然となった。

「検閲を免れた人は、事前に保衛員から知らせてもらったに違いない。」
「検閲が来る前に家にあったカネとモノを全部隠して、引っかからないように策を図った。」
「彼らには特恵が与えられるのに、われわれは為す術もないうちにやられた、」

集団での抗議を目の当たりにした保衛員たちは「われわれに何の力があるというのか」などと苦しい弁明を繰り返した挙げ句、逃げるようにその場を後にした。 保衛部と言えば、拷問や公開処刑、政治犯収容所の運営を担当してきた恐怖政治の象徴である。 それがタジタジになるとは、庶民の怒りの大きさはよほどのものだったに違いない。

この出来事は、北朝鮮社会の変化により、国民の法や権利に対する意識が変わりつつあることを示している。 金正恩氏が政権について以降、商行為に対する統制が緩和され、市場経済化がさらに進んだ。 緩和されたと言っても、たまに取り締まりが行われるのだが、力をつけた商人たちが押し返してしまうのだ。 商人は、自分たちのビジネスも金正恩氏の唱える「自力更生」であるとして、商売を行うことを権利として認識するようになり、権利の侵害に対して強く反発するようになったのだ。

意識が変わりつつあることを示す事例は、他にもある。 2016 年 10 月、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリー NK 内部情報筋は、保安署(警察署)が家宅捜索をしようと思ったが、この家に住む女性が「令状を見せろ」などと抵抗したという。 これまで、抗議を受けるのは主として保安員(警察官)だったが、今回は秘密警察である保衛員に対して抗議するようになったのが注目すべき点だ。

北朝鮮で、一般国民が権力に抗議することは、命がけだった。 金正日政権時代には、当局のあまりにも理不尽なやり方に立ち上がった労働者が虐殺される事件も起きている。 現時点においても、北朝鮮国民が本気で体制に抗うのは不可能なほどに難しい。 しかし、国民の中にいったん芽生えた権利意識を摘み取ることも、それと同じくらい難しいはずだ。 (高英起)

- Daily NK 2018 年 7 月 6 日 -


「なぜこうなるまで … 理解できない」 金正恩氏が激怒

北朝鮮の労働新聞(電子版)は 17 日付で、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が北東部、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の経済部門 8 カ所を視察した様子を報道した。 成果が上がっていないダムやカバン工場の実態に正恩氏が激怒し、責任を追及するよう指示したと報じた。

北朝鮮メディアは 2 日の報道でも、正恩氏が平安北道の紡織工場などを視察した際に関係者を叱責したと伝えた。 正恩氏は最近、経済を重視した新政策を強調しており、経済部門の担当者らの一層の奮起を促す狙いがあるとみられる。 17 日付の労働新聞は通常の 6 ページを 12 ページに増やし、9 ページにわたって正恩氏の視察の模様を伝えた。 正恩氏は漁郎川発電所の建設現場で、「30 年以上経っても工事が完了していない」と指摘。 「なぜこうなるまで内閣が対策を立てなかったのか理解できない、言葉が出ない」と激怒した。

また清津のカバン工場の視察では、施設がみすぼらしいとして「革命的気風がなく、主人らしい仕事ぶりではない」と指摘。 当該部門の責任を追及し、調査するよう指示した。 正恩氏は、4 月の党中央委員会総会や 5 月の党中央軍事委拡大会議で、経済建設に総力を挙げるという新戦略を強調した。 2016 年 5 月の党大会でも、「国家経済発展 5 カ年戦略」の方針を示し、遂行するよう指示している。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2018 年 7 月 17 日 -

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