*** 533 ***

... - 528 - 529 - 530 - 531 - 532 - 533 - 534 - 535 - 536 - 537 - 538 - ... - Back

北朝鮮の生活と経済 (34)

「コメの値段を外国にバラしたら終身刑」北朝鮮が情報統制

先日の中朝首脳会談開催に加え、4 月と 5 月には南北、中朝首脳会談が予定されている中で、北朝鮮当局は対話の流れに逆らうかのように、国内の引き締めを行っている。 その一つが「非社会主義現象」に対する「殲滅戦」だ。 咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリー NK 内部情報筋は、国家保衛省(秘密警察)が 3 月初めから新たな取り締まり組織を立ち上げ、全国に「非社会主義現象を根絶し、摘発時には厳罰に処す」といった内容の布告を貼り出した上で、大々的な取り締まりを行っている。

その対象は、宗教の伝道、脱北、密輸、違法通話、海外送金、覚せい剤・麻薬、迷信、投機、高利貸し、不順録画物保管や流布、違法な商売、賭博など多岐に渡り、「ひっからない人がいない(情報筋)」ほどだ。 当局は過去にも、思い出したかのように取り締まり作戦を繰り広げている。 両江道(リャンガンド)のデイリー NK 内部情報筋によると、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)の集会で政治講演が行われた。 「外国との携帯電話での通話は反国家行為とみなす」、「現行犯逮捕されたらすぐに教化所(刑務所)送り」などといったことが話された。 ここまでなら、今までも言われていたことだ。

ところが、講演者はそこからさらに踏み込んで「コメの値段は国家機密」、「外部に漏らしたら終身刑」などと言い出したというのだ。 そして「敵は情報を奪い、共和国(北朝鮮)を瓦解させようとしている」などと付け加えた。 バカげたことのように聞こえるが、必ずしもそうではない。 コメやガソリンなどの北朝鮮国内の物価情報は、海外の北朝鮮研究者やメディアが北朝鮮で何が起きているかを把握するにあたって、非常に貴重な目安となるからだ。

デイリー NK は、2009 年から概ね毎月、平壌、新義州(シニジュ)、恵山(ヘサン)のコメの値段と北朝鮮ウォンの対ドル相場を伝えているが、「コメの値段をバラしたら終身刑」発言は、このような状況を念頭に置いたものと思われる。 デイリー NK の内部情報筋はコメの値段だけではなく、国内で起きた事件、事故など当局が外国に知られたくないことも伝えている。 そのような事情が、当局の強硬姿勢の背景となっているのかもしれない。

北朝鮮は 2015 年、刑法を改正して「違法的な国際通信罪(222 条)」を新設した。 「違法に国際通信を行った者は 1 年以下の労働鍛錬刑、または 5 年以下の労働教化刑に処す」というものだ。 講演者が語った「終身刑」は条文にないものだが、法治主義が存在しないに等しい北朝鮮では、いくらでもあり得ることだろう。 デイリー NK の対北朝鮮情報筋は、最近の取り締まり強化は、外国には援助を求めつつも、そのことを国民に知らせたり、国内事情を海外に知られては今後の首脳会談において不利になりかねないと判断してのことだろうと見ている。

厳しい取り締まりに対して「住民の不満が高まっている(情報筋)」が、取り締まりを強化したところで、一連の「非社会主義現象」が根絶できるわけがない。 北朝鮮で取り締まりというものは、ほとぼりが冷めればうやむやになるものだ。 過去には韓流ドラマや映画のソフトを販売していた人が処刑された事例が存在するが、北朝鮮の人々の韓流好きは止められなかった。

- Daily NK 2018 年 3 月 31 日 -


北朝鮮が中国からコメ大量輸入「兵士の餓死を防ぐため」

北朝鮮の貿易会社が今年に入ってから中国から大量にコメを取り寄せている。 その行き先は朝鮮人民軍(北朝鮮軍)だという。 米政府系のラジオ・フリー・アジア (RFA) が報じた。 平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、北朝鮮の貿易会社は今年 1 月から中国から毎年 100 トンものコメを取り寄せている。 そのコメは軍部隊に優先的に供給されている。 鉄道や船で取り寄せるが、麻袋には何も書かれておらず、中国の貿易会社から取り寄せたのか、人道支援として入ってきたのかわからないとのことだ。

コメは、糧政事業所(精米、供給を担当する部署)で精米して、軍部隊に供給されるため、一般住民の手に届くことはない。 本来、軍部隊に供給されるコメは、協同農場で収穫されたものだが、収穫量が足りていない。 それだけではない。 輸送過程で損失が生じさらに目減りするのだが、その最大の理由は横領と横流しだ。 軍の規律は乱れきっており、こうした不正や性的虐待が横行している。 「軍の高位幹部と傘下の指揮官が軍糧米を横領するのは、よく知られた話だ。 ほとんどの部隊で食糧不足に兵士たちが慢性的な栄養不足に苦しんでいる。(咸鏡北道の情報筋)」

当局は、兵力の強化ではなく、兵士の餓死を防ぐために大量のコメを輸入しているということだ。 北朝鮮では 1990 年代、社会主義的な計画経済と国民への配給システムが事実上、崩壊。 その後はなし崩し的に市場経済化が進んでいる。 それに伴い、市場での商売に励む国民の購買力が増し、その力強い需要に応える形で、食糧供給が改善してきた。

しかし、その例外に置かれているのが軍隊だ。 規律に縛られた兵士たちは商売に取り組むことができず、現金収入を得られないから市場で食べ物を買うことができない。 配給の食糧は横流しされ、少なくない兵士たちが栄養失調に苦しんでいるとされる。 つまり、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の本当の敵は米軍でも韓国軍でもなく、「飢餓」と言えよう。

このような背景から、飢えに苦しむ兵士たちが協同農場を襲撃し、農作物を略奪する事件が頻発。 地域住民からは「あんな土匪(馬賊)みたいなやつらを使って一体どんな戦争をするというのか」と罵られている。 飢えた兵士たちは、国境を越えて中国にまで侵入し、たびたび強盗事件を起こしている。 そのため、中朝国境地域の中国側では、地元住民が自警団を結成して対応するほどだ。

また、国境警備の強化で最近は収まっているようだが、中朝国境地帯の中国側では脱北兵士による凶悪犯罪が相次いでいた。 2014 年 12 月には、吉林省和龍市の村の民家に北朝鮮軍の兵士が押し入り、4 人を殺害し、カネを奪って逃げる事件が起きた。 また、2015 年 4 月にも同じ和龍市で北朝鮮軍の兵士が強盗殺人事件を起こしている。 (高英起)

- Daily NK 2018 年 6 月 14 日 -


北朝鮮の中高生「恐怖の夏休み」 … 熱中症で大量死も

北朝鮮の中高生は夏休みの間、学校や国家から、様々な課題を押し付けられたり、組織生活や思想の総括を強いられたりする。 いちばんシンドイのが、おそらく農村支援だ。 北朝鮮の青少年は春に 30 日、夏に 30 日、秋に 45 日間、農村支援に動員される。 この期間、学生たちは学校にも行かずに家族から離れて、協同農場で農作業をしなければならない。 中学校 3 学年から大学を卒業するまでずっとだ。

今年は猛暑に襲われたこともあり、例年にも増してキツイ夏休みとなった。 いや、生命への危険が及んだくらいだから、「恐怖の夏休み」と言った方が良いかもしれない。 平壌の隣に位置し、北朝鮮の物流の中心となっている平城(ピョンソン)では、熱中症による死者が続出しているとデイリー NK の内部情報筋が伝えてきた。 市内の病院関係者によると、最高気温が 35 度に肉薄する猛暑となった先月 28 日から 30 日までの間に、平城医科大学病院、平城市病院、小児病院などに搬送された人だけで 300 人に達し、そのうち 39 人が死亡したという。

家の中や道端で倒れたお年寄りや、体の弱い人もいたが、猛暑の中で農場の「日照り対策戦闘」に動員され、重労働で倒れた若者も多くいたとのことだ。 北朝鮮当局は先月 20 日から、深刻な日照りに対処するために、人民班(町内会)の扶養家族(国の機関、国営企業に勤めていない人)や中学生・高校生までを大量動員している。

北朝鮮の農場では井戸、水路、揚水機などが不足しているため、動員された人々は川や貯水池で水を汲み、農場まで運ぶ重労働を強いられた。 睡眠も食事もまともに取っておらず、午前中の労働を終えた時点で体力を消耗し、疲労、無気力を訴える人が続出したという。 北朝鮮ではこのようにして亡くなっても、何ら補償は行われない。 中高生であっても同様だ。

子どもたちをこのような作業に動員することは、北朝鮮も批准している児童の権利に関する条約の 6 条(生命権)と 29 条(教育権)に違反している可能性がある。 それだけではない。 町中の工場では、「女工哀歌」並みの少女搾取が行われている現場もある。  近年、北朝鮮でも少子化が進行し、人口減少へ向かいつつあるとの情報があるが、金正恩党委員長は将来の貴重な国の担い手である子どもたちを、もっと大事にしたらどうなのか。 (高英起)

- Daily NK 2018 年 8 月 24 日 -

... - 528 - 529 - 530 - 531 - 532 - 533 - 534 - 535 - 536 - 537 - 538 - ... - Back

inserted by FC2 system