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北朝鮮の生活と経済 (36)

この国はもう終わり」北朝鮮を脱出した女性が見たモラル崩壊の極み

今月 5 日に旧正月を迎えた北朝鮮で、オルム(氷 = 覚せい剤を表す符丁)と呼ばれる覚せい剤の値段が高騰しているという。 米政府系のラジオ・フリー・アジア (RFA) によると、覚せい剤を買い求める人が多すぎて売り切れ状態になったためだという。

違法薬物、とりわけ覚せい剤の蔓延は北朝鮮社会が抱える深刻な問題の一つだ。 北朝鮮で麻薬や覚せい剤は国家機関の主導で製造され中国や日本に密輸された。 ところが、各国当局の厳しい取り締まりによって徐々に減少。 それが北朝鮮国内で薬物が蔓延するきっかけとなる。 薬物の「在庫」もあれば、製造技術も原材料もある。 しかし売り先はない。 自ずと国内で流通しはじめたのだ。

覚せい剤が蔓延する背景として、違法薬物が深刻な害を及ぼすという認識が国民の間で徹底されていないことがある。 旧正月前後に覚せい剤の需要が高まったのも、「正月のプレゼント」として覚せい剤が贈られるからだというのだ。

覚せい剤が贈り物として扱われるようになったのは、今にはじまったことではない。 2014 年に脱北した薬物密売人は、「当時、会寧(フェリョン)市に住む成人の 70 - 80% ぐらいはオルムをやっていたと思う。 私の客は、ごく普通の人々だった。 警察官、保衛員、朝鮮労働党員、教師、医師たち。 オルムは誕生日のパーティーや高校の卒業祝いのための、非常に良い贈り物だった。」と述べている。

さらに懸念すべきは、覚せい剤の購入層として中高生の割合が高くなっていることである。 RFA の情報筋は「以前は、周囲の顔色を窺いながらオルム(覚せい剤)を入手していたが、最近では気にせずに購入している。」と述べる。 日本に在住する脱北者の A さん(40 代の女性)は、薬物の蔓延が北朝鮮を離れる決定的なきっかけだったという。 「隣家の 10 代の学生が覚せい剤中毒になって大変な騒ぎとなった。 それをきっかけに薬物について独自で調べたところ、あまりにも薬物が蔓延する実情を見て、この国(北朝鮮)はもう終わりだと思い、脱北を決意した。」

薬物の蔓延については、金正恩党委員長も深刻な問題としてとらえているようだ。 RFA の消息筋によると、「覚せい剤の製造、販売で摘発されたら死刑も覚悟しなければならない」という。 それでも大金を稼ぐことができるのが、覚せい剤ビジネスなのだ。 また、北朝鮮の厳しい現実があるからこそ、覚せい剤に手を染める人々がいる。 違法薬物に対する北朝鮮社会全体の意識を変えない限り、薬物が蔓延する状況は改善しそうにない。 このままだと、薬物蔓延が金正恩体制を脅かす可能性すらある。 (高英起)

- Daily NK 2019 年 2 月 19 日 -


北朝鮮の食糧生産、09 年以降で最低 自然災害など影響

国連は 6 日、北朝鮮の 2018 年の食糧生産が、自然災害などの影響を受けて前年比で 9% 減となり、少なくとも 09 年以降で最低を記録したと発表した。 国連は、北朝鮮で 380 万人が緊急の人道支援を必要としているとして、国際社会に資金の拠出を求めた。 同日公表された報告書「欠乏と優先事項」によると、食糧の総生産量は前年比 50 万トン減の 495 万トンだった。 耕作地や農業機器、肥料の不足に加え、昨年 7 - 8 月に穀物地帯を襲った熱波、台風、干ばつ、洪水などの災害が響いた。 地域差も大きく、地方での困窮ぶりが激しいという。

人口の 4 割超にあたる推定 1,090 万人が栄養価の高い食事や飲料水などの人道支援を必要としている状態。 国連のデュジャリック報道官によると、昨年は必要額の24% しか集まらなかったといい、緊急支援に 1 億 2 千万ドル(130 億円)が不足しているという。 一方、同国を巡っては、安全保障理事会が科している制裁を無視した、ぜいたく品の流入が問題になっている。 制裁の履行状況を監視する専門家パネルは未公表の最新報告書で、金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長が使う高級車ロールスロイスなどを「明白な制裁違反」と指摘している。 (ニューヨーク = 金成隆一)

- 朝日新聞 2019 年 3 月 7 日 -


北朝鮮、本当に食糧難? 生産量落ちても、米値下がりの謎

北朝鮮の食糧事情が「ここ 10 年で最悪」と言われるなか、不足しているはずのコメの価格が値下がりする不思議な「逆転現象」が起きている。 専門家の間では、実際は食糧難でないといった見方も。 国際社会の制裁の影響もあり、苦しい状況には違いないようだ。 国連世界食糧計画 (WFP) は 3 日、北朝鮮の 2018 年の農作物の生産量が前年から 12% 減り、136 万トンが不足すると発表した。 原因は干ばつや洪水で、1,010 万人が食糧不足に陥ると指摘している。

北朝鮮経済を専門にする韓国の IBK 企業銀行の゙奉鉉・研究委員は「経済が困窮した 1990 年代後半の『苦難の行軍』後、餓死者という表現はあまり使われていないが、6 月や 7 月には使われるかもしれない」と語る。 一方、情報機関から報告を受けた国会情報委員会に所属する国会議員によると、昨年は 1 キロ 5 千ウォン台だったコメの価格が、最近は 4 千ウォン台に値下がりしている。 この議員は「食糧供給が減っておらず、むしろ状況が良くなっているともいえる」と語る。

どういうことなのか。 世界北朝鮮研究センター(ソウル)の安燦一所長は「過去には生産量の減少が直ちに食糧難につながったが、市場の発展で、その構造が変わりつつある」と指摘する。 在庫などの形で蓄えられる食糧が増えたため、というわけだ。 米価上昇で体制批判が起きることを恐れた北朝鮮当局が、軍などの備蓄米を放出したとの見方もある。 とはいえ、制裁の影響で一部の肥料や農業資材、農業機械の燃料が不足し、生産能力は落ちている。 食糧事情は今後も悪化していくとの見方が強い。

国連制裁で鉱物資源の輸出が禁じられたため、鉱山で働く人たちが収入減となり、食生活が厳しくなっているとの情報もある。 5 月初旬に人道支援目的で北朝鮮に入り、地方都市も訪れた韓国の宗教関係者は「石炭や鉄鉱石など鉱山関連の企業所がある地域の食糧事情が特に厳しい。 周囲に住む家族たちにも影響が出ている。」と話した。 (ソウル = 神谷毅)

- 朝日新聞 2019 年 5 月 25 日 -


北朝鮮、突然の黄金ラッシュに沸く 住民と当局者入り乱れて取り合い

北朝鮮の北部地域のいくつかの河川で砂金が大量に発見され、当局と付近に住む農民、労働者が入り乱れて、時ならぬ「黄金ラッシュ」に沸いているという。 7 月 4 日に両江道の取材協力者が伝えてきた。 砂金が大量に見つかったのは、北部の両江道(リャンガンド)の河川。 下流の咸鏡南道(ハムギョンナムド)の端川(タンチョン)市に水力発電所を建設しているのだが、工事のために上流域の水を一時的に迂回させて水を抜いたところ、川底の砂に金が混じっていることが分かったという。

資金難の国家機関が住民排除するも

国際社会の経済制裁によって資金難に苦しんでいるのは国家機関も同じだ。 そのため、両江道の労働党機関、保安局(警察)、検察所が人を動員して砂金採りを始めた。 さらに近隣の住民も、我も我もと集まり河原は大混雑しているという。 取材協力者は次のように言う。

「恵山(ヘサン)市郊外を流れるウンチョン江では、川底の砂 1 トンから 2 グラムも金が採れるそうで、商売不振で困窮した人や付近の農民たちが砂金採りに大勢集まり始めた。」

突然の砂金発見に目を付けたが新興成金の「トンチュ」たちだ。 当局から砂金採り作業の請負を始め、臨時に雇った人を引き連れて川底を深く掘削しているという。

「当局は砂金を独占すべく、警察が川辺への一般人の出入りを禁じて、夜間には勝手に人が入り込まないよう警備まで立てている。 だが、住民たちは警備員に賄賂を払って入り込み砂を盗んで行っている。」

と、協力者は述べた。(カン・ジウォン)

- AsiaPress 2019 年 7 月 8 日 -

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