=== 原発への対応と将来の展望 3 (h) ===

福島の 3 市村で避難区域再編 4 月から立ち入り規制緩和

野田政権は 30 日の原子力災害対策本部で、東京電力福島第一原発周辺に設けた避難区域のうち、4 月から南相馬市、田村市、川内村を先行させて見直す方針を決めた。 放射線量が低い地域は立ち入り規制を緩め、道路の通行や一時帰宅もより柔軟に認める。

避難区域の再編では、原発から半径 20 キロ内の警戒区域と区域外の計画的避難区域を、放射線量に応じて 3 区域に見直す。 区分は、(1) 早期の帰還をめざす「避難指示解除準備区域(年間換算の放射線量が 20 ミリシーベルト以下)」、(2) 帰還まで数年以上かかる「居住制限区域(20 - 50 ミリシーベルト)」、(3) 5 年以上帰宅できない「帰還困難区域(50 ミリシーベルト超)」になる。

今回は、比較的放射線量が低い 3 市村が対象。 南相馬市の避難区域は (1)〜(3) に、川内村は (1) と (2) に、田村市は (1) に、それぞれ再編することを決めた。 (1) や (2) に区分された地域は、立ち入りを制限している警戒区域も解除し、道路の通行や一時帰宅がしやすくなる。 田村市と川内村は 4 月 1 日から、南相馬市は同 16 日から実施する。 (asahi = 3-30-12)

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「帰還困難」一括 600 万円 原発事故賠償へ新指針

東京電力福島第一原発事故の損害賠償の目安として、政府の原子力損害賠償紛争審査会は 16 日、政府の避難区域見直しに合わせた新指針を決めた。 自宅に長く戻れない地域の住民には避難先や引っ越し先での生活を支えるため、精神的苦痛などへの賠償として一括で「1 人 600 万円」を支払うことにした。

政府は今後、福島県内の避難区域を三つに再編する。 「帰還困難区域(年間放射線量が 50 ミリシーベルト超で、5 年以上住めない地域)」、「居住制限区域(年 20 ミリシーベルト超から 50 ミリシーベルト)」、「避難指示解除準備区域(年 20 ミリシーベルト以下)」だ。

3 月中には、田村市や川内村などを避難指示解除準備区域にするか、区域の指定を解除して除染を進め、住民が早く帰れるようにするかを決める。 居住制限区域と帰還困難区域は一度にすべて指定されることに反発もあるため、指定を 4 月以降に遅らせて各自治体の理解を求める。 (asahi = 3-17-12)

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自主避難、個別に賠償へ 一律を転換、東電が金額決定

東京電力福島第一原発事故の損害賠償について、政府の原子力損害賠償紛争審査会は、「自主避難」地域の福島県 23 市町村の住民に「一律 8 万円」としていた賠償額を、今後は東電が住民の事情に応じて個別に決める方針を固めた。 16 日の審査会で決定する。

事故から 1 年たち、賠償の必要が薄れている人もいるとして、賠償対象や金額を絞ることにした。 賠償が支払われなかったり減らされたりするおそれがあり、自主避難地域の住民から反発が出る可能性もある。

審査会は昨年末、23 市町村の住民約 150 万人には原発事故で「精神的苦痛」を受けたことなどへの賠償額として、昨年 3 月 11 日〜昨年末を対象期間に「妊婦と 18 歳以下の子どもは 1 人 40 万円」、それ以外は「1 人 8 万円」の指針を決めた。 避難状況の確認には手間がかかるため、避難していてもしていなくても一律の賠償額を払うことにした(支払いはこれから)。 (asahi = 3-16-12)

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海藻セシウム、数カ月で激減 福島第一から 50 キロ地点

東京電力福島第一原発から約 50 キロの福島県いわき市の海岸で採れた海藻中の放射性セシウムが、数カ月の間に 20 分の 1 - 70 分の 1 へと急速に減っていることが、神戸大などの調査でわかった。 海水中の濃度が落ちたためとみられる。 16 日から京都市で開かれる日本植物生理学会で発表する。 神戸大の川井浩史教授(藻類学)が、いわき明星大と共同で、いわき市永崎の海藻の放射性セシウム濃度を定期的に調べた。

乾かしたワカメ 1 キロあたりのセシウムは、昨年 5 月は約 9,500 ベクレルあった。 それが 7 月には 666 ベクレル、9 月には 479 ベクレルと約 20 分の 1 まで減った。 同様にアナアオサでは 5 月の約 5,900 ベクレルから 10 月の 80 ベクレルまで約 74 分の 1 に、アラメでは 5 月の約 1 万 1 千ベクレルから 10 月の 222 ベクレルまで約 50 分の 1 に下がった。 (asahi = 3-14-12)

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50 ベクレル検出の食品、重点検査 厚労省が指針

4 月から導入される食品の放射性物質の新基準で、厚生労働省は 12 日、具体的な検査手順を定めた指針を発表した。 一般食品の新基準である放射性セシウム 100 ベクレルの半分の 50 ベクレルを超えた品目から重点的に調べることにした。 新基準を超える食品が検査をすり抜けてしまうのを防ぐ狙いで、検査件数は大幅に増える見通しだ。

新基準では、食品 1 キロあたり 100 ベクレルを超えれば、出荷停止の対象になる。 検査は抽出調査が原則。 厚労省は、50 ベクレルを超えた場合、同じ地域で新基準を上回るものも含まれている可能性があるとみている。 網の目を細かくして、新基準を超える食品の流通を防ぎたい考えだ。 重点検査は、これまでに 50 ベクレルを超えた品目と、今後の検査で新たに 50 ベクレルを超えたものを対象とする。

指針は、これまで検査を要請していた東日本の 17 都県に向けて作成した。 汚染度が比較的高い地域とそれ以外の地域で、調べる食品サンプル(検体)などに差をつけた。 17 都県を汚染状況で二つに分け、これまで複数の品目で出荷停止になった福島、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の 6 県の A グループと、それ以外の青森、岩手、秋田、山形、埼玉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡の 11 都県の B グループとした。

100 ベクレルを超える品目について、主要産地では A グループでは週に 3 検体以上、B グループでは週に 1 検体以上検査する。 50 ベクレルを超えるが 100 ベクレル以下の品目は、主要産地では両グループとも週に 1 検体以上検査する。 これまでは暫定基準値の 500 ベクレルを超えた地域やその周辺地域でしか調べていなかった。 調べる検体数や検査地域も明文化せず、自治体まかせだった。

一方、ホウレンソウやキャベツなどは重点的に調べる対象ではなくなった。 野菜類は原発事故直後に放射性ヨウ素が降下して基準を超えたものが多く、今後はほとんど出ないとみているためだ。

また、海産物については 17 都県の 2 分類とは別に、福島、宮城、茨城、岩手、千葉の 5 県のグループを設けた。 5 県の中の一部地域でも 50 ベクレルを超えた魚種については、5 県すべてで重点検査する。 福島沖で汚染した魚種が隣接県にも広がっている可能性があるためだ。 検査品目も増やした。 新基準のコメへの適用は 10 月以降で、検査は市町村ごとに出荷を始める前に行う。 (沢伸也、asahi = 3-13-12)

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即避難解除の選択提示 原発警戒区域の再編で国側

東京電力福島第一原発事故の警戒区域などの再編をめぐり、国が被曝(ひばく)線量がおおむね年 20 ミリシーベルト以下の福島県田村市、楢葉町、川内村に対し、「避難指示解除準備区域」へ移行せず、いきなり避難指示を解除する選択もあるとの考えを提示したことがわかった。 判断を委ねられた形の市町村側は、賠償で差が出ることなどを懸念し、慎重に判断するという。

国は、現在の警戒区域などについて、▽ 線量が年 20 ミリシーベルト以下で、段階的帰還を目指す「避難指示解除準備区域」、▽ 年 20 - 50 ミリシーベルトで、帰還まで数年かかる「居住制限区域」、▽ 年 50 ミリシーベルト超で、5 年以上は帰れない「帰還困難区域」 - - の 3 区分に再編する方針だ。 国の原子力災害現地対策本部の幹部は今月、関係市町村の首長らと相次ぎ会談。 4 月以降に再編する考えを伝えた。 (asahi = 3-8-12)

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汚染土壌のセシウム、加熱処理で除去 99.9% が揮発

原発事故で汚染された土壌の放射性セシウムを、加熱処理で 99.9% 除去する技術を太平洋セメント(本社・東京)や中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)などの研究チームが開発した。 除染作業後の汚染土の保管量の減少につながると期待される。

チームは福島県内の農地の汚染土に 2 種類のカルシウム化合物を加え、1,350 度まで加熱。 セシウムの 99.9% が揮発してフィルターで回収できることを確かめた。 カルシウム化合物の添加で、土壌の粒子とセシウムの結びつきが弱まるのが今回の技術のポイントという。 小型の電気炉で1時間加熱する実験では、土壌中に含まれる放射性セシウムが 1 キロあたり 6 万 7,300 ベクレルから同 29 ベクレルへと激減した。 (asahi = 3-1-12)

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コメ作付け、500 ベクレル以下の地域容認へ 条件付き

農林水産省は 28 日、東京電力福島第一原発事故を受けた今年のコメの作付け方針を公表した。 警戒区域と計画的避難区域の全域に加え、昨年、1 キロあたり 500 ベクレルを超える放射性セシウムが検出されたコメが作られた地域での作付けは禁止する。 100 ベクレル超から 500 ベクレル以下の地域では、出荷前の全量検査などを条件に例外的に作付けを認める。

同省は 4 月に食品に含まれるセシウムの新基準(1 キロあたり 100 ベクレル)が施行されるのに合わせ、方針を検討してきた。 昨年末に 100 ベクレル超から 500 ベクレル以下は「禁止を検討」とする案を公表。 福島県の対象市町村の多くから「作らせてほしい」との要望が上がったことから、例外を設けた。

条件として、▽ 作付け前に水田を除染し、イネへのセシウムの移行を減らす効果があるカリウムを含んだ肥料をまく、▽ 出荷段階ですべてのコメを検査する「全袋検査」を受け、安全性を確認できたものだけ出荷できる仕組みを整える - - ことなどを挙げている。 (asahi = 2-28-12)

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「放射能汚染水の情報公開を」 海洋基本計画巡り前原氏

民主党の前原誠司政調会長は 27 日、東大でのシンポジウムであいさつし、来年 3 月までに見直す政府の海洋基本計画について「3・11 (東日本大震災)が起き、5 年前に想定していないものを計画に入れなければならない」と指摘した。

具体例として、太平洋に流出した放射能汚染水や、米西海岸に漂着するがれきに関する情報公開をあげ「基本計画には『海洋環境の保全』が盛り込まれている。 科学的見地に基づく情報公開で、他国の懸念を払拭することが大事だ」と語った。 (asahi = 2-27-12)

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コメのセシウム、カリウム肥料増やせば大幅減

農林水産省系独立行政法人傘下の中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)などは 24 日、放射性セシウムで汚染された水田でも、肥料のカリウムの投入量を増やせばコメ(玄米)へのセシウム移行を大幅に減らせるケースがあるとの実験結果を発表した。 研究チームは東京電力福島第一原発の事故を受け、福島、茨城、栃木、群馬の各県でイネの作付け試験を実施。 肥料などの条件を変え、セシウムの移行しやすさへの影響を調べた。

その結果、カリウムのうち、作物に吸収されやすい形の「交換性カリ」が、土壌 100 グラムあたり 25 ミリグラム程度になるように調整された肥料を使うと、玄米に含まれる放射性セシウムの濃度を減らす効果が大きいことがわかった。 一方、カリウム濃度を高くしすぎても、移行を防ぐ効果は期待できないという。 (asahi = 2-24-12)

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「賠償、帰村後も継続検討」細野原発相が川内村住民に

細野豪志原発相は 18 日、東京電力福島第一原発事故で住民の大半が避難する福島県川内村を視察し、住民と意見交換した。 村は 4 月 1 日に公共施設を再開して住民の帰宅を進める「帰村宣言」をしている。 細野氏は、帰村後も東電からの損害賠償が続くよう検討していることを明らかにした。

住民の帰宅後も東電の賠償が続くかどうかははっきり決まっていないが、細野氏は「帰村で賠償が終わると、帰村の妨げになる。 賠償が打ち切られることがないよう政府内で協議している。」と説明。 「できるだけ早く結論を出したい」とした。 住民からは徹底した除染を求める意見も出たが、細野氏は「放射線量が年間 2 ミリシーベルトなら、住んでも大丈夫と断言する」と語った。 (asahi = 2-18-12)

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食品の放射能基準は厳しすぎ … 文科省審議会、異例の注文

厚生労働省がまとめた食品中の放射性セシウムの新基準について、文部科学省放射線審議会は 16 日、「必要以上に厳しい」として、被災地の食生活や農業への影響に配慮するよう異例の注文を付けた。 ただ、基準そのものについては了承した。 一方、厚労省は 4 月施行に向けて、予定通り、法整備を進める方針だ。

厚労省の基準案は、食品による年間の被曝線量を 1 ミリシーベルトと設定し、一般食品は 1 キロあたり 100 ベクレル、乳児用食品はその半分の 50 ベクレル、牛乳も 50 ベクレルなどと定めている。 審議会は、この基準について、放射線による障害を防ぐ観点から「差し支えない」と答申した。 一方で別紙で意見、注文を付けた。 (asahi = 2-16-12)

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「原発安全審査、不十分だった」 班目・寺坂両氏が謝罪

東京電力福島第一原発事故の原因を検証する国会の事故調査委員会は 15 日、参考人として、原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長と経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長から、事故時の対応や原発規制などについて聴取した。 両氏は原発の安全審査が不十分だったと認め、謝罪した。

班目氏は、原発の立地基準や設計についてまとめた原子力安全委員会の安全審査指針について、津波や長時間の電源喪失に対する十分な記載がなかったことに言及。 「誤りがあったと認めざるを得ない」と陳謝。 寺坂氏も「安全規制担当者として、本当に申し訳ない」と語った。 事故調の黒川清委員長は聴取後の記者会見で「(現在の)審査指針は全面的な改定が必要。 緊急時の備えができていない。」と述べた。 (asahi = 2-15-12)

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「震災前の家に戻りたい」が減少 原発事故避難者調査

東日本大震災から 1 年を前に、朝日新聞社は 1 月下旬から 2 月中旬、福島大学の今井照研究室と共同で東京電力福島第一原発事故による避難住民への聞き取り調査をした。 震災前の自宅に戻る意欲を持ち続けながらも、早期の帰還に不安を抱いたり、除染の難しさからあきらめの気持ちが芽生えたりする人が目立った。

3 度目の調査になる今回は、震災前に住んでいた地域に「戻りたい」、「できれば戻りたい」と答えた人が合わせて 58%。 第 2 回調査の 65% より減った。 「5 年後の生活はどうなっているか」という質問には、「これまでと違った新しい生活」との回答が 5 割、「いまと同じような避難生活」が 3 割。 安心した帰還が見通せず、別の場所での生活を視野に入れる人が増えている。 (asahi = 2-15-12)

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原子力規制庁、片道出向は幹部のみ 独立性維持に限界も

4 月に新設される原子力規制庁の職員のうち、出向元省庁に戻さない「ノーリターン・ルール」の適用は審議官級以上の7ポストに限定することがわかった。 ノーリターン・ルールは組織の独立性を保つ狙いがあるが、対象が限られるため、原子力推進行政を担う経済産業省などの影響力を排除できるか未知数だ。

原子力規制庁は、経産省原子力安全・保安院や内閣府原子力安全委員会などの機能をまとめ、環境省の外局として立ち上げる。 東京電力福島第一原発の事故を受け、原発を推進してきた経産省から規制部門を分離することが狙いだ。 細野豪志原発相は 1 月末の記者会見で「利用と規制の分離の観点から、一定クラス以上の幹部職員はノーリターン・ルールを適用しなければならない。 とくに推進側からの組織の分離は重要だから、徹底したい。」と語っていた。 (asahi = 2-6-12)

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正確な放射能測定へ試料提供 土壌測定のばらつき校正

国際的に信頼される正確な放射能測定を目指して、国内にある 21 施設が国際原子力機関 (IAEA) と共同プロジェクトを始めた。 協定を結んだ筑波大が 3 日、発表した。 IAEA が放射性物質を含む土壌などの標準試料を、東大や大阪大など各施設に提供。 標準試料を測定して出た値と正しい値とを比べ、測定機のばらつきを校正する。

放射能測定値は、放射性物質から出るガンマ線の値をもとに計算して求めるが、一定方向のガンマ線しか測れず、水や土などに一部吸収される。 正確な測定のためには、実際に何 % のガンマ線を測れるのか事前に考慮しておく必要がある。 この前提が正しくないと、誤った測定をすることになる。

これまで日本には、国際的に標準となっている IAEA の標準試料がほとんどなく、十分な校正ができなかった。 国内で測定し汚染度が基準値以下とされた茶葉が輸出先のフランスで基準を上回る問題も起きた。 (asahi = 2-4-12)

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福島・川内村が初の帰村宣言 新年度から役場・学校戻る

東京電力福島第一原発の事故で、ほぼ村ごと避難している福島県川内村の遠藤雄幸村長は 31 日、「帰村宣言」をした。 役場や小中学校などの公共施設を 4 月 1 日から元の場所で再開する。 原発事故で役場ごと避難した県内 9 町村で、時期を明示して帰還を表明したのは初めて。

記者会見で遠藤村長は「放射線などが心配な人はもう少し様子を見てからでいい。 戻れる村民から戻って、村を再生したい。」と述べた。 川内村には昨年 3 月、3 千人余が暮らしていた。 原発事故で、全域が警戒区域と緊急時避難準備区域に指定され、全村民が避難。 福島県郡山市に仮役場や仮設診療所を置き、1 校ずつある小中学校も同市内の空き教室を使っている。 (asahi = 1-31-12)

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50 ミリ超地域は除染困難 環境省、工程表公表

環境省は 26 日、国の直轄で放射性物質の除染をする福島県の警戒区域と計画的避難区域の除染ロードマップ(工程表)を公表した。 地上から高さ 1 メートルの放射線量が年 50 ミリシーベルト以下の地域は、2014 年 3 月までに作業を終えて居住可能な 20 ミリシーベルト以下にする。 50 ミリシーベルトを超える高い線量の地域は「今の除染技術でそこまで下げるのは困難」とし、断念することも視野に実施時期の明示を見送った。

両区域ではすでに役場などの公共施設で除染を始めている。 森林を除く約 6 万世帯の住宅や農地、商工業施設などについて、政府が今後、線量別に再編する 3 区分ごとに優先順位をつけた。 このうち、20 ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」は帰還を段階的に実施するため、今月にも住民説明会を開き、私有地への立ち入りや除染の同意を取り付ける手続きに入る。 (asahi = 1-26-12)

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原発事故、心理的・社会的な影響も調査へ 政府事故調

東京電力福島第一原発事故で、政府の事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東京大学名誉教授)は 20 日、今夏にまとめる最終報告は事故の原因解明にとどめず、「原子力事故による心理的、社会的な影響」も調査範囲に含めたいとの考えを明らかにした。

事故調が昨年 12 月にまとめた中間報告について、福島県内の自治体防災担当者に説明する会を福島市で開催。 畑村氏らが「調査で残っている不明な点の一つ」として紹介した。 畑村氏は「これまでは主に発電所の中や東電、政府で起きたことを考えていた。 しかし、今は原発事故が被災地に与えた影響の方がはるかに大きな意味を持っている。 最終報告では、こうした影響を見ないと調査全体として不適当だ。」と述べた。 (asahi = 1-20-12)

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汚染土保管場を公開 国の除染、一部で進む 南相馬

東京電力福島第一原発事故の警戒区域内での除染で出る汚染土などを置く「現場保管場」が 14 日、福島県南相馬市で報道陣に公開された。 地面に掘った穴に、袋詰めした汚染物を積み、シートで覆う構造。 ここから「仮置き場」に移し、いずれは「中間貯蔵施設」に移す計画だ。 国が行う除染モデル事業の一環。 南相馬市では、小高区の金房小学校周辺の約 13 万平方メートルの敷地を対象に、民家や農地の除染が進んでいる。

現場保管場は、モデル地区内の市のグラウンドに設置された。 20 メートル x 70 メートルの穴 2 カ所、20 メートル x 50 メートルの穴 1 カ所(いずれも深さ約 2.5 メートル)を掘り、はぎ取った表土や草木、作業員の使用済みの作業着など約 7 千立方メートル分を収容する。 1 - 2 トンずつ袋に詰め、3 段積みにする。 (asahi = 1-14-12)

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コメ全袋放射性物質検査へ 福島県、今秋から

福島県は 5 日、2012 年産のコメについて秋から出荷段階で全袋を対象に、放射性物質の検査を行う方針を明らかにした。 県による検査ではなく、JA や流通業者が実施する自主検査に、新たな機器を導入して全袋を調べる。 この流通経路の検査は県産のコメのほとんどが対象になるという。

東京電力福島第一原発事故の影響で、福島県で昨年収穫されたコメから国の暫定基準値(1 キロあたり 500 ベクレル)を超える放射性セシウムが相次いで見つかった。 県はサンプル調査や、一定の地区について農家の全戸調査を行っているが、消費者の信頼確保に向け全袋検査が必要と判断した。

現在は、サンプルをゲルマニウム半導体検出器などで調べている。 この方法では、週約 8 千袋(1 袋 30 キロ)の検査が限界で、年間生産量 35 万 6 千トンの県産のコメを全袋調べると仮定すると約 30 年かかる計算だ。 (asahi = 1-5-12)

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SPEEDI 端末設置を拡大 30 キロ圏内 5 県にも

原発事故などの際、放射性物質の大気中濃度や被曝線量の影響を予測する「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI 〈スピーディ〉)の端末が、滋賀県など原発から半径 30 キロ圏内の 5 県に新たに設置されることが分かった。 スピーディを運営する文部科学省が、設置費や維持管理費を新年度予算案に盛り込んだ。 東京電力福島第一原発の事故後、滋賀県などがシステムの利用を求めてきた。

設置されるのは、気象や放射性物質のデータを収集する端末と、収集したデータをもとに原子力安全技術センターが作成した拡散予測図を表示する端末。 端末はこれまで、(1) 原発や関連施設がある、(2) 原発や関連施設から半径 8 - 10 キロの防災対策重点地域 (EPZ) の範囲に入る - - という条件を満たす 19 道府県にしかなかった。

しかし、国の原子力安全委員会の作業部会が 10 月、EPZ を拡大し、新たに半径 30 キロの「緊急時防護措置準備区域 (UPZ)」を設定する案を提示。 これを受けて、端末の設置範囲を滋賀をはじめ、福岡、山口、富山、岐阜の 5 県にも広げるという。

費用は、データ収集用と表示用の端末 2 セットの設置費や維持管理費を合わせ、1 県当たり約 2 千万円で、国の原子力発電施設等緊急時安全対策交付金を充てるという。 各県は来年 4 月以降、文科省を通じて原子力安全技術センターと設置をめぐる協議を進め、来年度内には設置される見込みという。 (千種辰弥、asahi = 12-28-11)

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中間貯蔵施設、福島・双葉郡に設置方針 環境相が明言

細野豪志環境相は 28 日、福島市で佐藤雄平福島県知事らと会談し、放射性物質に汚染された土壌などの廃棄物を保管する中間貯蔵施設を福島県双葉郡内に造る考えを示した。 国として中間貯蔵施設の設置場所を明らかにするのは初めて。 佐藤知事は「非常に重く受け止める」と応じた。

東京電力福島第一原発は双葉郡に立地している。 中間貯蔵施設について、野田政権は 2012 年度中に設置場所を正式に決め、15 年から運用を開始する予定。

佐藤知事や双葉郡の 8 町村長らと会談した細野氏は「双葉郡内の中に造らせていただけないか」と要請。 理由として「廃棄物が大量に発生する地域の近くに造るべきだ」と説明した。 そのうえで、「年間(換算の)放射線量が 100 ミリシーベルト以上の地域は、除染によって放射線量を下げるのは困難で、国が土地を買い上げたり、借り上げたりすることも視野に入れて中間貯蔵施設の場所としたい」とも語った。

政権は来年 3 月末をめどに現在の避難区域を見直し、年間放射線量が 50 ミリシーベルト以上の地域を「帰還困難区域」に指定する。 この区域内で 100 ミリシーベルトの地域は居住を事実上禁止し、土地の買い上げなどによって用地を確保する考え。

細野氏は具体的な町村までは言及しなかったが、現段階の測定値で 100 ミリシーベルトを超えている地域は、双葉町、大熊町、浪江町などにある。 細野氏は、年明けにも双葉郡内の除染工程表をつくり、放射線量が低い場所から優先的に除染を進める方針も示した。

中間貯蔵施設では 30 年間貯蔵した後、福島県外で最終処分する予定。 敷地面積は約 3 - 5 平方キロメートルを想定、その中に 1,500 万 - 2,800 万立方メートルの容量をもつ施設を造る。 福島第一原発内への設置を求める声もあったが、廃炉作業に 30 年以上かかり、事実上不可能だ。 細野氏はこの日の会談で、国の特殊会社を通じて施設の建設や運営に当たる方針も示した。 (関根慎一、asahi = 12-28-11)

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国の本格除染事業、1 月に楢葉町から開始

東京電力福島第一原発事故に伴う警戒区域と計画的避難区域で国が行う本格的な除染は、来年 1 月に福島県楢葉町から始まることがわかった。 本格除染は、住民が避難している区域では、早期に帰宅できるよう放射線量が比較的低い場所から進める方針という。

環境省によると、最初に本格除染に着手するのは、楢葉町役場周辺の体育館やコミュニティセンター、道路など約 4 ヘクタール。 空間放射線量は毎時 0.5 マイクロシーベルト前後という。 作業にあたる業者を公募中で、1 月に契約を結び、今年度中に作業を終える計画。 同省は、ほかの市町村でも、自治体側との調整が整い次第、除染作業に入る考えだ。

楢葉町などではすでに、本格除染に先立つモデル事業が始まっている。 27 日には、同町のモデル地区の「南工業団地」などで作業が報道陣に公開された。 同団地は約 47 ヘクタールの敷地に 28 棟の工場が並ぶ。 12 市町村で設定されているモデル地区のなかで最も広い。 (asahi = 12-28-11)

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乳児用は 50 ベクレルに 食品中の放射能で新基準案

厚生労働省は、食品に含まれる放射性物質の新たな基準案をまとめた。 子どもが放射性物質の影響を受けやすいことに配慮して、「乳児用食品」と「牛乳」は 1 キロ当たり 50 ベクレルとしたほか、「飲料水」は 10 ベクレル、「一般食品」は 100 ベクレルにした。 来年 4 月からの適用を予定している。

この案は 22 日に開かれる厚労省の薬事・食品衛生審議会に提案される。 放射性セシウムの暫定基準は「牛乳・乳製品」、「飲料水」が 200 ベクレル、「野菜類」、「穀類」、「肉、卵、魚、その他」が 500 ベクレルになっている。 新基準は暫定基準より「飲料水」が 20 倍、「牛乳」は 4 倍、「一般食品」は 5 倍厳しくなる。 (asahi = 12-20-11)

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除染対象の 8 県 102 市町村公表 費用は原則国が負担

東京電力福島第一原発の事故による放射能汚染で、環境省は 19 日、東北・関東地方の 8 県の 102 市町村を国から除染の財政支援が受けられる「汚染状況重点調査地域」に指定した。 放射線量が毎時 0.23 マイクロシーベルト以上で事故による追加被曝線量が年間 1 ミリシーベルトを超える区域があることが条件。 同省が事前に市町村に指定を受けるかどうか尋ねていた。

指定されるのは岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉県の市町村。 来年 1 月に本格施行される放射性物質汚染対処特別措置法によって、市町村が地表から 1 メートルのところで 0.23 マイクロシーベルト以上になる区域を選んで除染計画を立てる。 すでに除染を始めている場合も対象。 線量の測定や除染に直接関係する費用は原則、国が負担する。

ただし、指定条件にあたる区域があるのに、「市町村全域で線量が高いと誤解されかねない」などとして指定を受けていない市町村があるという。 一方、局所的に周囲より線量が高い「ホットスポット」だけの除染は対象外だ。 千葉県銚子市のように、指定を受けられないか相談した市町村でも、線量が高い一定の広さの区域が対象になるとして指定を見送ったケースもあった。

また、福島第一原発から 20 キロ圏内の警戒区域や、線量が年間 20 ミリシーベルトを超える計画的避難区域の 11 市町村を国が直接除染する「除染特別地域」に指定した。 (杉本崇、asahi = 12-19-11)

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20 ミリ Sv 未満、来春にも帰宅 避難区域再編を伝達

東京電力福島第一原発の「事故収束」宣言を受け、原発から半径 20 キロで線引きした避難区域が見直される。 野田政権が 18 日、来年 4 月 1 日をメドに現在の警戒区域を解除し、年間放射線量に応じて三つの区域に再編する方針を関係自治体に伝えた。 放射線量が低い区域は、生活インフラなどが整えば来春にも、住民が戻ることができる。

細野豪志原発相と枝野幸男経済産業相、平野達男復興相の 3 閣僚が 18 日、福島市を訪ね、佐藤雄平福島県知事らに伝えた。 現在は原発から半径 20 キロ圏内を警戒区域とし、20 キロ圏外で計画的避難区域を設定。 この線引きを今年度中に見直し、地上から高さ 1 メートルの放射線量を年間で換算して 20 ミリシーベルト (Sv) 未満を「避難指示解除準備区域」、20 - 50 ミリシーベルト未満を「居住制限区域」、50 ミリシーベルト以上を「帰還困難区域」に再編する。

避難指示解除準備区域は「生活インフラの復旧や子どもの生活圏の除染の進捗を踏まえ、段階的に解除する」と定める。 解除前でも住民の一時帰宅や復旧作業のための立ち入りを柔軟に認め、事業再開を先行させる考えも示した。 実際に住民が戻り始める時期について、細野氏はこの日の朝日新聞のインタビューに「来春から年央(来年 6、7 月ごろ)だろう」と答えた。 (asahi = 12-18-11)

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原子力安全委の審査委員、ほぼ半数が電力業界から

内閣府の原子力安全委員会 = 班目(まだらめ)春樹委員長 = で原発の安全を審査する審査委員 76 人(12 月現在)の半数近い 37 人が、過去 5 年に、審査される立場にある電力事業者とその関連組織に所属していたことがわかった。 安全委への自己申告から明らかになった。

安全委は電力事業者や国を指導する立場にある。 多くの審査委員が、審査する側とされる側の双方に所属していたことになり、線引きがあいまいな実態が浮かんだ。

審査委員は大学などで原子力や耐震性、放射線を専門とする研究者らで非常勤。 安全委は 2009 年、電力事業者や原子力関係機関、学会、行政庁との関係を審査委員に自己申告させて公開することを決めたが、2 年以上公開を怠っていた。 朝日新聞が今年 11 月に指摘し、ホームページで初公開された。

朝日新聞が分析すると、計 32 人の審査委員が、安全委の審査を受ける電力事業者・原子力関係機関の設置組織で原子力に関する助言をするメンバーに就いていたり、電力事業者の常勤職員を務めていたりした。 (asahi = 12-18-11)

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教科書、原発の負の側面を強調 各社が訂正申請

東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故を受け、来年度の小中高校の教科書の多くが書き換えられる。 文部科学省によると、中学の教科書では全体の 3 割で訂正申請が出された。 原発については安全性の記述が弱まり、負の側面を教える記述が増えた。 「シーベルト」などニュースでよく耳にする言葉も盛り込まれた。

文科省によると、来年度発行予定の教科書は小中高で計約 1,300 点。 今月 8 日までにこのうち 106 点について震災・原発事故関連の訂正申請があり、認められた。 とくに中学校用は全 131 点の 3 割近い 37 点に及んだ。 検定作業が終了したのは 3 月末で、直前に起きた震災と原発事故は盛り込めなかったため、検定段階の内容から改めた。 高校用の大半と小学校用は現行の教科書を書き直した。

原発関連はこれまで効率の良さや温暖化への影響の小ささの記述が目立ったが、負の側面の記述を大幅に増やした教科書が多い。

東京書籍は高校現代社会で「原子力発電の『安全神話』は根底から覆された。 世界では『Fukushima』の事故を契機に、原子力発電所の全廃を決めるなど『原発推進』を見直す国が出てきている。」とした。 開隆堂出版は中学技術・家庭(技術分野)で「原子炉は、コンクリートなどでできた何重もの厚い壁で守られ」との記述を削除した。

清水書院の中学社会(公民)も「(事故が起きれば)大きな被害が生じる危険性がある」を「とり返しのつかない大きな被害が生じる」と強めた。 一方、太陽光などのクリーンエネルギーの記述は「石油や石炭をおぎなえるようにはなっていない」から「大きな期待がかけられている」へと前向きに書き直した。

放射線への関心の高まりを受け、放射線の強さと体への影響の関係を示した図や「暫定規制値」といった言葉、「シーベルト」の説明などを書き加えた教科書もある。 数研出版の高校物理基礎は、放射線の影響を「将来のがんの発症の原因となったり、被曝量が大きい場合には急性の障害を引き起こすこともある」と説明した。 (花野雄太、asahi = 12-16-11)

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年間 20 ミリシーベルト「発がんリスク低い」 政府見解

低い放射線量を長期間浴びた影響をめぐり、内閣府の有識者会議は 15 日、年間 20 ミリシーベルトの放射線量を避難区域の設定基準としたことの妥当性を認める報告書をまとめた。 そのうえで、線量を少なくするよう除染の努力を要請。 子どもの生活環境の除染を優先することも提言した。

東京電力福島第一原発の事故後、政府の機関が被曝への影響を判断するのは初めて。 野田政権はこれを踏まえ、原発事故による住民避難を解除する準備に入る。 この有識者会議は「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ(共同主査 = 長瀧重信・長崎大名誉教授、前川和彦・東大名誉教授)」。 発足からわずか 1 カ月余りで、報告書をとりまとめた。

避難区域の設定基準については、国際放射線防護委員会が原発事故による緊急時被曝を年間 20 - 100 ミリシーベルトと定めていることから「安全性の観点からもっとも厳しい値を採用している」と指摘。 チェルノブイリ原発事故後 1 年間の被曝限度を 100 ミリシーベルトとしたことを挙げ、「現時点でチェルノブイリ事故後の対応より厳格」と評価した。

年間 20 ミリシーベルトを被曝した場合の影響は、「健康リスクは(喫煙など)他の発がん要因と比べても低い」と明記。 そのうえで、「喫煙は(年間)1 千 - 2 千ミリシーベルト、肥満は 200 - 500 ミリシーベルト、野菜不足や受動喫煙は 100 - 200 ミリシーベルトのリスクと同等」などと例示した。 また、動物実験の結果などから、一度の被曝より長期間にわたって累積で同じ線量を浴びた方が「発がんリスクはより小さい」ことを認定した。

被曝によるリスクを減らすために、除染の目標として「2 年間で年間 10 ミリシーベルト、次の段階で同 5 ミリシーベルト」と段階的な目標の設定を提言した。 一方、放射線の影響を受けやすいとされる子どもについては、「優先的に放射線防護のための措置をとることは適切」と要求。 避難区域内の学校を再開する条件として、学校での被曝線量を年間 1 ミリシーベルト以下にするよう主張した。 (asahi = 12-15-11)

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