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金正恩をとり巻く人々 (8)

金正恩氏「拷問部隊」トップの逆襲がはじまった

今年 2 月はじめに、失脚・粛清説が伝えられていた北朝鮮の秘密警察、国家保衛省のトップである金元弘(キム・ウォノン)氏が復帰したもようだ。 金元弘氏は 15 日に開催された軍事パレードに登場。 ひな壇に立った姿がカメラに捕らえられた。

韓国の国家情報院(以下、国情院)は 2 月 27 日、国家保衛省の次官級幹部 5 人以上が高射銃によって処刑されたと明らかにした。 事情通によると、高射銃で使用される 14.5 ミリ口径弾は「1 発でも当たれば、人体の一部が吹き飛ぶ。 発射速度の速い機関銃で打てば、粉々になり原形をとどめないだろう。」という恐るべきものだ。 金正恩党委員長は執権以後、この銃火器によって朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の高級幹部であろうと無慈悲に処刑してきた。

一方、金元弘氏については失脚し、軟禁状態にあると国情院は報告した。 金元弘氏は、その後、本来ならいてもおかしくはない公式行事で姿が見えなかった。 なんらかの理由で一時的に表舞台から姿を消していたことは間違いない。 15 日に見られた金元弘氏は、大将の階級章を付けていたものの、やつれた姿だった。 序列は崔富一(チェ・ブイル)人民保安相より下。 金正恩氏が登場すると、金元弘氏は不動の姿勢で敬礼したが、正恩氏は彼を左指でさして何やら言ったものの握手はしなかった。

ただし、同日に開かれた中央報告大会と、錦繍山(クムスサン)太陽宮殿の参拝では姿は確認されていない。 こうしたことから、韓国統一省の担当者は、金元弘氏の復帰は確実ではないとしている。 その一方で、25 日の朝鮮人民軍創建記念日の訓練には再び姿を見せた。 また、米政府系のラジオ・フリー・アジア (RFA) によると、金元弘氏の復帰にともない朝鮮労働党の中で嵐が吹き荒れているという北朝鮮国内からの情報がある。 金元弘氏が逆襲をはじめたというのだ。

そもそも、金元弘氏と国家保衛省に対する粛清は次のような事件が発端となっている。 金正恩氏が両江道(リャンガンド)を訪れた際に、歌を歌った子どもを褒め称えたが、この褒め言葉の意図を歪曲して伝えたことをめぐり、道の勤労団体部長だったチャン・ミョンホ氏が国家保衛省に逮捕され、銃殺されるという事件が起きた。 ところが、これがウソの密告によることが判明する。 それを知った金正恩氏が激怒し、国家保衛省に対する検閲(監査)を指示した。

また、金元弘氏が、意図的に上級機関である朝鮮労働党組織指導部(以下、組織指導部)幹部 6 課(国家保衛省担当)の担当課長を逮捕し、拷問を加えて死に至らしめたという説も流れている。 しかし、RFA の情報筋は、組織指導部は権力層の人事権、検閲権を牛耳っており、それはあり得ないと主張する。 情報筋によると、組織指導部の検閲で、国家保衛省がめちゃくちゃにやられたのは事実だが、金元弘氏に対する検閲はまだ終わっておらず、護衛司令部保衛局で取り調べを受けているという。

国家保衛省の内部事情に精通した別の情報筋によると、昨年末、組織指導部党生活指導課(総括を取り仕切る部署)が、国家保衛省に対する検閲を行ったが、その時は、金元弘氏が復帰できると考える人は誰ひとりとしていなかった。 つまり皆が皆、彼の命運は尽きたと考えるほど過酷な検閲が行われたということだ。 しかし、ここに来て金元弘氏よりも苦しい立場に追いやられているのは、組織指導部幹部 3 課(地方指導担当)の方だという。

金元弘氏は、検閲の際、労働党の地方組織の幹部に対する個人崇拝や、地方割拠主義が深刻なレベルに達していると訴え続けた。 歴代の最高指導者が最も警戒し、その萌芽を容赦なく摘み取ってきた宗派(分派)主義が、地方において深刻化しているということだ。 実際、金正恩体制になってから、地方の党組織が肥大化しているという批判が多く寄せられていた。

そして、体制を揺るがしかねない宗派主義が蔓延しているのに何もしてこなかったとして、組織指導部幹部 3 課の方が責め立てられるようになった。 逆に金元弘氏は、最高指導者を守ったという肯定的な評価を受けるようになった。 党生活指導課は、自分たちに飛び火するのを恐れて、すべての責任を幹部 3 課に押し付け、戦々恐々としているという。 ここに来て風向きが変わり、金元弘氏の逆襲がはじまったのかもしれない。

金元弘氏の逆襲が真実だとするなら、またもや北朝鮮国内で粛清の嵐が吹き荒れることになる。 なんといっても、国家保衛省は韓流ビデオのファイルを保有していたという容疑だけで、女子大生にすら拷問を加えるほど残忍な機関だからだ。 (高英起)

- Daily NK 2017 年 4 月 28 日 -


金正恩氏が摘発を厳命、北朝鮮の「4 大犯罪」とは

北朝鮮の金正恩党委員長が、国家保衛省(秘密警察、保衛省)などの司法機関に対して、綱紀の緩みを警告する文書を送っていたことがわかった。 米政府系のラジオ・フリー・アジア (RFA) が報じた。 絶大な権力を握り、わが世の春を謳歌していた保衛省だが、昨年末から今年初めにかけて大々的かつ検閲(監査)を受けた。 トップの金元弘(キム・ウォノン)氏が解任され、複数の幹部が処刑、権限が次々に奪われるなどして、組織はガタガタ、やる気はダダ下がりになっていると伝えられる。 今回の文書は、それに活を入れる意味合いがあったものと思われる。

文書は同時に、人民保安省(警察)と検察所にも送付されており、各機関の間での過剰な忠誠競争を戒める意味も含まれているようだ。 両江道(リャンガンド)の情報筋によると、各地方の司法機関(保衛局、保安局、検察所)に、日付のない講演提綱(レジュメ)が伝達された。 その内容は概ね次のようなものだ。

司法機関における綱紀の緩みはもはや座視できないレベルに達した。 そうなれば社会主義も、人民の生命、財産、安全も守れなくなる。 軍隊の使命が国を守ることならば、司法機関の使命は社会主義体制と人民の生命、財産を守ることだ。 それなのに、司法機関のイルクン(活動家)は、与えられた使命を忘却している。 司法機関は「非社会主義行為」、「麻薬」、「賭博」、「迷信(宗教)」の 4 大犯罪が頭をもたげることのないように、強力に闘争すべきだ。 同時に、国内の不純分子、スパイに反対する闘争を強化すべきだ。

慈江道(チャガンド)の情報筋は、この警告に「萎縮せず果敢なる革新と改造を行い、生まれ変われ」という意味が込められていると解説した。 また、講演提綱には「覇気あふれ意欲旺盛な若者を先頭に立て」とのくだりがあり、これは世代交代を暗に示したものだと受け止められている。 さらに「告発を受け付けても、本当に自分たちが捜査を行うべき事案なのかよく考えるべき」として、越権行為や、保衛省と保安省の間で起きている過剰な忠誠競争を戒めている。

一方で情報筋は、4 大犯罪と言えば従来は「売春」が含まれるのに、今回の文書では替わって「迷信」が挙げられていることを指摘し、金正恩氏がいかなる宗教も認めないという姿勢を示したものだと解説した。 韓国のキリスト教(プロテスタント)は、脱北者の救援や、北朝鮮国内の布教活動を含む人権活動に非常に積極的であることから、北朝鮮当局から目の敵にされている。 (高英起)

- Daily NK 2017 年 5 月 29 日 -


正恩氏、改めて「並進路線の貫徹」 妹は党政治局員候補

北朝鮮の朝鮮労働党は 7 日、金正恩(キムジョンウン)党委員長らが出席して中央委員会総会を平壌で開いた。 正恩氏は情勢報告を行い、核開発と経済改革を同時に進める並進路線の貫徹を改めて呼びかけた。 朝鮮中央通信が 8 日朝、伝えた。 正恩氏の妹で党宣伝扇動副部長とされる金与正(キムヨジョン)氏が党政治局員候補に選ばれるなど、世代交代も進んだ模様だ。

党中央委総会の開催は、現在の党体制を決めた昨年 5 月の第 7 回党大会の際に行われて以来。 会議では党中心の政治体制を確認した。 米朝の軍事衝突の可能性が高まるなか、従来の対決路線を改めて訴えると共に、国内体制を固める狙いもあるとみられる。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2017 年 10 月 8 日 -

☆ ★ ☆

正恩氏に近い女性 2 人、党幹部に抜擢 実妹と人気楽団長

7 日の朝鮮労働党中央委員会総会で、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の実妹、金与正(キムヨジョン)氏と、正恩氏とかつて親密な関係をうわさされた玄松月(ヒョンソンウォル)氏がそれぞれ幹部に抜擢された。 北朝鮮は今も女性差別が強く、「正恩氏の特別の指示がなければありえない人事(脱北者)」だ。

金与正氏は党宣伝扇動部副部長を務めているとされ、閲兵式などで、かいがいしく正恩氏の世話を焼く姿も公開されている。 今回、同部の崔輝(チェフィ)第 1 副部長らと共に党政治局員候補に昇進した。 また、玄氏は北朝鮮の人気女性歌手として活躍。 現在は女性グループ「モランボン楽団」の団長を務める。 2015 年 12 月には楽団を率いて訪中した。 今回の人事で、国防委員会設計局長などとして活躍した馬園春(マウォンチュン)氏らと共に中央委員候補に抜擢された。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2017 年 10 月 9 日 -

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