*** 515 ***

... - 510 - 511 - 512 - 513 - 514 - 515 - 516 - 517 - 518 - 519 - 520 - ... - Back

金正恩、凋落の始まり (7)

金正恩氏の秘密警察「公開処刑を封印」は本当か

北朝鮮の金正恩党委員長は今年 1 月末、国家保衛省(秘密警察)に対して、「職権を乱用して金儲けをするな」、「住民に対する暴行、拷問などの人権侵害をやめよ」などといった指示を出した。 これを受け国家保衛省は、従来のやり方を改める素振りを見せており、ついには専売特許の「公開処刑」をも、一時的にせよ封印しようとしている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリー NK 内部情報筋によると、保衛相は昨年まで、韓流ドラマ・映画の視聴、脱北やそのほう助、不穏な言動をした者を公開裁判にかけて、一部を銃殺にしていた。 ところが、今年に入ってから状況が一変した。 3 月初め、会寧(フェリョン)市で、数十回に渡って脱北幇助を行っていた 40 代男性が逮捕された。 保衛省や人民保安省(警察)は、以前ならあたかも大物スパイを捕まえたかのように大騒ぎしていたところだが、公開裁判は行われなかった。

韓国の国家情報院傘下のシンクタンク・国家安保戦略研究院は、昨年 12 月に出した「金正恩執権 5 年 失政白書」で、金正恩氏は 3 代世襲を固めるために、叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏をはじめ、高官や一般住民など 340 人を公開銃殺したり、粛清したりするなどの反人道的行為を行ったと指摘している。  しかしこうした「見せしめ」が逆効果を生み、金正恩氏に対する世論が悪化したことを受け、公開処刑や人権侵害を禁じる命令が出されたようだ。

両江道(リャンガンド)の別の内部情報筋によると、「皆、口に出しては言わないが、今まで続いた恐怖政治で金正恩氏に対して背を向けた人が少なくない。 朝鮮半島を取り巻く情勢の緊張や、春の食糧難で敏感になっているのに、下手なことをすれば何が起こるかわからない。」という。 また情報筋は、金正恩氏が政権について 6 年目に入り、自信を持ったことも影響していると見ている。

「言うことを聞かない幹部や住民に凶器を突きつける恐怖政治でやってきたが、大きな政治的事件が怒らない限りは、多少のことは寛大に受け入れる『包容政治』でやっていこうとしているのかもしれない。(情報筋) 」 だが、昨日の本欄でも述べた通り、正恩氏は韓流ビデオなどの売買について、死刑を含む重罰で臨む方針も示しているとされる。 たったそれだけのことで死刑にするなど、それ自体が重大な人権侵害であるということがわかっていないわけだ。 これまで公開していた処刑を、非公開にしたからといって、北朝鮮の人権状況が改善されたことにはならないのである。 (高英起)

- Daily NK 2017 年 6 月 3 日 -


北朝鮮「美人ウェイトレス」を窮地に追い込む金正恩氏の無理難題

北朝鮮の金正恩党委員長が得意とする「人質外交」が、韓国にいる脱北美女たちを窮地に立たせるかもしれない。 北朝鮮当局はマレーシアで発生した金正男氏の殺害事件において、マレーシア政府が遺族への遺体返還を優先させる方針を示すや、自国内に滞在するマレーシア国民を人質に取る暴挙を強行。 その結果、殺害事件の重要な証拠でもある遺体を奪い取ることに成功した。

正恩氏は、この「成果」に味をしめたようだ。 今回、新たな「人質外交」のターゲットとされたのは昨年4月、中国・浙江省寧波市にある北朝鮮系の「柳京食堂」を抜け出し、韓国に亡命した女性従業員ら 12 人だ。 世間で、「北朝鮮レストランの美人ウェイトレス」として知られる女性たちである。 北朝鮮の対韓国窓口機関・祖国平和統一委員会の関係者は 7 日、平壌で AFP 通信のインタビューに応じ、南北離散家族の再会事業を再開させるには、上記の女性従業員 12 人と、もう 1 人の脱北女性の計 13 人の送還が前提条件となるとの方針を示した。

離散家族は、主として朝鮮戦争により北朝鮮と韓国で生き別れになった人々で、その再会事業はきわめて重要な人道問題だ。 しかし南北関係の悪化を受けて、2015 年を最後に開かれていない。

韓国では北朝鮮との関係改善を目指す文在寅政権の誕生を受け、右派の自由韓国党を除く与野党が、今年 8 月に離散家族再会の実現を目指すことで合意している。 北朝鮮が核開発やミサイル発射を繰り返す中でも、これならば国際世論に気兼ねすることなく、南北で接触を持つことができる。 もしかしたらそれが、本格的な対話の糸口になるかもしれない - - 韓国側が抱いたであろうこのような淡い期待を、正恩氏はすかさず打ち砕いて見せたというわけだ。

韓国側が、脱北したレストラン従業員らの送還に応じる可能性は低い。 しかし、一抹の不安もある。 韓国では「民主社会のための弁護士の会」など一部の市民団体が、彼女たちを「1 日も早く(北朝鮮の)家族の元へ帰すべきだ」との驚くべき主張を展開しているのだ。 そうした主張の背景には複雑な政治的事情があるのだが、結果的には「女性従業員らは南の情報機関に拉致された」との北朝鮮側の主張に乗る形になってしまっている。

そして、女性従業員らの送還を離散家族再会の前提条件とする今回の北側の主張は、こうした市民団体の声をより大きなものにする可能性がある。 いずれにせよ、女性従業員らの人権も離散家族の悲痛な願いも屁とも思わない正恩氏にとっては、結果がどっちへ転ぼうが痛くもかゆくもない。 女性従業員を奪い返すことができれば丸儲けである。 われわれは、本当にたちの悪い男に核武装を許してしまったものだ。 (高英起)

- Daily NK 2017 年 6 月 10 日 -


正恩氏、米韓の襲撃恐れ活動減らしたか 韓国が分析

韓国の情報機関、国家情報院は 15 日、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長が米韓による襲撃を恐れて、公開の活動を減らしているなどとした分析結果を国会の情報委員会所属議員との懇談会で報告した。 北朝鮮は 5 月、「米韓が正恩氏の暗殺を計画している」と非難していた。

議員によると、報告では正恩氏の今年の公開活動は 15 日までで 51 回。 昨年同時期より 32% 減った。 毎春行われている米韓合同軍事演習の期間中でみた場合、昨年の 8 回から今年は 2 回に激減した。 活動は深夜が多く、自身が所有する「メルセデス・ベンツ」ではなく、部下にプレゼントした「レクサス」の高級車に乗って移動しているという。 北朝鮮が今月釈放した米国の大学生について、国情院は、大学生の健康状態が極度に悪化したため、やむなく釈放したとの見方を示した。 朝鮮中央通信は 15 日、「中央裁判所の 13 日付の判定に従い、人道的見地から送還した」と報じた。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2017 年 6 月 15 日 -


「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

<極秘の性奴隷施設に、処刑見学後の豪華ランチ … 脱北者の女性が語った、北朝鮮の子供たちが生きていくために叩きこまれる暗黙のルール>

クラスメートが国家の独裁者によって性奴隷にされる - -。 2015 年に脱北した 26 歳のイム・ヒヨン(仮名)は、北朝鮮でこの光景を目の当たりにしたと語った。 英紙デイリーメールに掲載された記事で、彼女が北朝鮮で体験した恐ろしい出来事が語られている。 脱北者は、暴露することで自らを危険にさらすことになるが、ヒヨンは重い口を開き恐怖政治の実態を明かした。

ヒヨンによると、金正恩国防委員長は性奴隷として拘束した 10 代の少女らを秘密の施設に収容しているという。 この施設は極秘のため、収容された少女らの足取りを辿るのは不可能。 当時、クラスで一番綺麗な友人が性奴隷に選ばれ、施設に連れて行かれた。 施設では、金正恩にマッサージとセックスを施す性奴隷の仕事が待っているという。

暗黙のルールに従う子供たち

北朝鮮で暮らす子供は、口に出してはいけない「暗黙のルール」を自然と理解して成長する。 「他の子供と同じように私にも友達がいた」と普通の子供と変わらないことを強調したヒヨンだが、一方で「幼いころでさえ金正日総書記(当時)に一切疑問を持たなかった」そうだ。 ヒヨンが北朝鮮で目にしたものは、この「暗黙のルール」が破ってはいけないものだと教え込むのに十分すぎるほど残酷だ。

金正恩は首都ピョンヤンで暮らす上流階級に公開処刑を見学させた後、豪勢なランチを振る舞うという。 ポルノ映画を製作したとして罪に問われた歌手ら 11 人の処刑には、市民 1 万人が集まった。 ヒヨンもその 1 人だった。 「連行される歌手たちは、縛りあげられ、頭にはフード、口に猿ぐつわをはめられた状態で慈悲を乞うことも叫びを上げることも許されない。」 最終的に歌手たちは、対空砲の砲弾が尽きるまで撃たれた。 ヒヨンはこれを 200 フィート(約 60m)の距離で見ており、その後で気持ち悪くなってしまった。

戦争しかない金正恩

ヒヨンは、金正恩が戦争に踏み切るまで状況は差し迫っている、と語っている。 金正恩は自分の立場を案じており、さらには逃げ場もないからだ。 「金正恩を支持しなければ誰でも殺されるから、みんな公然と支持している。 金正恩に近い身内の者でさえ。」 核とミサイルで国際社会を脅すことに血道を上げる独裁者と「暗黙のルール」が崩れ去る日は来るのだろうか。

- NewsWeek 2017 年 9 月 20 日 -

... - 510 - 511 - 512 - 513 - 514 - 515 - 516 - 517 - 518 - 519 - 520 - ... - Back

inserted by FC2 system