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中朝国境と南北境界線 (3)

逃走兵士、5 時間の手術 北朝鮮軍の銃撃、四十数発

南北軍事境界線上にある板門店の共同警備区域 (JSA) で韓国側に逃走を図って銃撃を受けた北朝鮮軍の男性兵士が 13 日深夜まで、京畿道水原市(キョンギドスウォンシ)の大学病院で 5 時間にわたる緊急手術を受けた。 意識不明の重体で、人工呼吸器をつけて治療を受けている。 病院側によれば、兵士には 5 - 6 カ所の銃創があった。 大部分は弾が貫通しており、臓器の 7 - 8 カ所に損傷が見られたという。 兵士の体力が続かないため、手術をいったん終了した。 2 - 3 日安静にした後、数回にわたる手術が必要という。

国連軍司令部などによれば、兵士は 13 日午後 3 時 15 分ごろ、板門店の軍事境界線近くまで小型四輪駆動車で乗り付けた。 下車して韓国側に逃走する途中、他の北朝鮮軍兵士 4 人から四十数発の銃撃を受けたという。 韓国側は同日午後 3 時半ごろ、軍事境界線から 50 メートルほど入った韓国側施設「自由の家」の脇で、北朝鮮側から身を隠すように倒れていた北朝鮮軍兵士を発見。 北朝鮮側の銃撃を避けるため、韓国軍兵士 3 人が地面をはって倒れていた北朝鮮軍兵士に近づき、身柄を確保したという。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2017 年 11 月 14 日 -

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体内から巨大寄生虫、脱北兵士が伝える北朝鮮の食糧事情

[ソウル] 南北軍事境界線上にある板門店から韓国に亡命した際に重傷を負った北朝鮮兵士の体内から発見された寄生虫は、孤立する北朝鮮を長年苦しめている栄養不足や衛生面の問題を露呈した、と専門家は指摘する。  亡命の際に銃撃され、重傷を負った脱北兵士の手術を行った Lee Cook-jong 医師は 15 日、兵士の命を救うため行われた一連の手術で、消化器官から摘出された寄生虫数十匹の写真を会見で公開。 消化器と同じような色をしており、最長 27 センチのものもあったという。

「外科医として 20 年以上の経験があるが、こんなものは教科書でしか見たことがない」と同医師は話した。 これらの寄生虫と、胃袋から見つかったトウモロコシの芯は、これまでの脱北者や専門家が語ってきた北朝鮮の一般的な食料と衛生事情を裏付けることになるだろう、と専門家は話す。 「北朝鮮の健康事情を示す確かな数字はないが、医療専門家は、寄生虫の感染や、他の深刻な健康問題が国内で広がっているとみている」と、寄生虫が専門のソウル大学医学部の Choi Min-Ho 教授は話す。 兵士の状態は、「北朝鮮の衛生や寄生虫の問題を考えれば、驚くことではない」と語る。

この兵士の胃袋の中身が北朝鮮国民の全体像を反映しているとは限らないものの、エリートの任務を与えられた兵士として、少なくとも平均的市民と同等の食料供給を得られていたと考えられる。 病院によれば、この兵士は臀部や脇、肩や膝などを撃たれていた。

最善の肥料

Lee 医師は記者会見で、韓国でも、40 - 50 年ほど前まで寄生虫は一般的だったが、経済が大きく発展するにつれ消滅したと指摘。 北朝鮮からの脱北者の治療にあたった経験のある他の医師も、さまざまな種類の寄生虫を体内から除去したと報告している。

北朝鮮で長引く寄生虫問題は、「下肥」とも呼ばれる人糞の使用とも関連があるとみられている。 「化学肥料は 1970 年代まで国から支給されていたが、1980 年代初頭から生産が減った」と、1995 年に韓国に亡命した北朝鮮農業の専門家 Lee Min-bok 氏は指摘する。 「1990 年代には、国はもはや化学肥料を支給できなくなり、農家は代わりに大量の下肥を使い始めた。」 2014 年には金正恩・朝鮮労働党委員長自ら、畑の肥料として、人糞のほか動物のフンや有機堆肥の利用を奨励した。

だが家畜が不足していたため、動物のフンは利用が難しかったと、農業専門家の Lee 氏は言う。 さらに状況を難しくしているのは、寄生虫リスクがあるにもかかわらず、下肥が「北朝鮮で最高の肥料」と考えられていることだ、と同氏は言う。 「下肥で育てた野菜は、他のものより美味と言われている。」

限定的な食生活

医師は記者会見で、兵士は身長 170 センチ、体重 60 キロで、胃の中身はトウモロコシだったと説明。 トウモロコシは北朝鮮の主要穀物だが、国連が 2001 年以来で最悪とする干ばつの影響により、その依存度がさらに高まっている可能性がある。 コメほど人気はないが、より安価なトウモロコシ輸入量は、北朝鮮で収穫が危ぶまれている年に増加する傾向にある。 中国当局が公表したデータによると、今年 1 月から 9 月にかけて、中国は北朝鮮に 4 万 9,000 トン近いトウモロコシを輸出。 2016 年の輸出量はわずか 3,125 トンだった。

北朝鮮の核開発をめぐる経済制裁や干ばつにも関わらず、トウモロコシとコメの価格は比較的安定していることが、脱北者が運営する韓国の北朝鮮専門ネット新聞「デイリー NK」の市場データをロイターが分析した結果、明らかになった。 政府の配給制度で飢きんを防げなかった 1990 年代以降、北朝鮮の人々は食物を確保するために、市場や他の民間手段に次第に頼るようになった。 世界食糧計画 (WFP) によれば、同組織が支援する保育園に通う北朝鮮の 6 カ月以上 5 歳未満の乳幼児の 4 分の 1 が、慢性的な栄養失調に苦しんでいる。

平均的にみて、北朝鮮の人々は韓国の国民よりも栄養状態が悪い。 WFP は、北朝鮮の子どもの 4 人に 1 人は、韓国の同年代の子どもに比べて身長が低いとしている。 2009 年の調査では、北朝鮮の就学前児童は、韓国育ちの同世代より最大で 13 センチ背が低く、体重も最大 7 キロ軽かった。 「北朝鮮の大きな問題は、食生活が単調なことだ。 主にコメやトウモロコシ、キムチと味噌ばかりで、必須栄養素である脂肪やたんぱく質を欠いている」と、WFP は 9 月、ロイターに宛てた書面で指摘した。

- Reuters 2017 年 11 月 20 日 -

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銃撃を受けた脱北兵が意識を回復 自ら年齢と名前を明らかに

13 日にソウル板門店(パンムンジョム)共同警備区域 (JSA) を通じて亡命する過程で銃撃を受けた北朝鮮兵士が意識を回復し、自らを 25 歳の「オ・○○」と明らかにしたと 21 日、複数の政府消息筋が伝えた。 ある消息筋はこの日、「亡命した北兵士が 19 日、突然『ああ、痛い』と言って話し始めた。 現在、少しの対話が可能なほど良くなった。」と説明した。 ただ、オ氏が衰弱しているうえ人工呼吸管を挿入していたのどの傷のために正常な意思疎通ができる状態ではないと、別の政府消息筋は話した。

オ氏は 13 日、5 カ所に銃傷を負い、亜洲大病院に運ばれた後、何度か生死の境をさまよった。 軍関係者は「意識が回復する前、音が耳に入るよう集中治療室で韓国の歌謡を聞かせ、目を開くようにテレビもつけた」とし「オ氏が韓国で保護されたことを知らせるために太極旗(韓国の国旗)も貼っておいた」と伝えた。 オ氏の手術をした亜洲大病院のイ・グクジョン教授は 22 日、患者の状態について説明する予定だ。 一方、国連軍司令部軍事停戦委員会は「13 日に JSA 北兵士亡命に関する調査がほとんど終わり、近いうちに発表する。 亡命の過程が入った映像も公開する。」と述べた。

- 韓国・中央日報 2017 年 11 月 22 日 -

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板門店近く勤務の「運転兵」が脱走か 脱北者が映像分析

韓国と北朝鮮の軍事境界線上にある板門店で 13 日、北朝鮮軍の男性兵士が韓国側に逃走して北朝鮮軍の銃撃を受けた事件で、国連軍は 22 日、事件当時の映像を公開した。 映像から何がわかるのか。かつて非武装地帯 (DMZ) で 13 年間勤務した脱北者に聞いた。 映像によれば、男性が乗った小型四輪駆動車が、北朝鮮・開城方面から高速で接近し、板門店に着いた。 最後の検問所では制止を受けたとみられる場面もあった。

脱北者によると、この道路は数キロごとに検問がある。 北朝鮮軍では車両が行方不明になれば、すぐに非常態勢が敷かれ、道路は封鎖される。 直前まで制止されなかったことから、男性は板門店近くの DMZ に勤務する兵士とみられるという。 韓国情報委員会の所属議員によれば、男性は下士官で最も下の階級にあたる「下士」という。 ただ映像では、将校も使う軍服を着ており、職業軍人の可能性が高いという。 通常、3 - 4 年の軍勤務で下士に昇進する。 入隊後に職業軍人の道を選ぶケースもあるという。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2017 年 11 月 23 日 -

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