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核兵器禁止条約 保有国に強く訴えたい

核兵器禁止条約の制定を目指す初の交渉が 27 日から 5 日間、国連本部で行われる。 巨大な破壊力を持つ核の廃絶に、国際社会が一歩を踏み出す。 核兵器を持つ国こそ、交渉に加わるべきだ。 禁止条約制定を主導するのはオーストリアやメキシコなどで、既に非核地帯条約を締結している東南アジア、中南米、アフリカを中心に 113 カ国が交渉開始の決議案に賛成した。

核兵器を持つ米国、ロシア、英国、フランス、中国は条約に反対か、消極的であり、交渉にも参加しないとみられる。 交渉は 6、7 月にも行われるが、難航は避けられない情勢だ。 だが、国際社会には核の非人道性をもっと深刻に受け止めるべきだという考えが広がる。 核が使われたら、人命や経済、社会生活に甚大な被害が出るのはもちろん、医療チームや消防、軍隊も長期間、救出活動ができない。 放射性物質による環境破壊も続く。 それほど人道に反する兵器は開発、保有、使用まで全面的に禁止すべきだという考えだ。

核保有国の抵抗は強い。 核抑止力による安全保障を考慮しながら、段階的に軍縮を進めるべきだと主張する。 現実の国際政治では、核軍縮、不拡散はむしろ後退している。 トランプ米大統領は米メディアとの会見で「核戦力で他国に後れを取ることは決してない」と明言した。 オバマ前大統領が提唱した「核なき世界」の目標を見直す動きもある。 ロシアのプーチン大統領はウクライナ紛争を抱え、オバマ政権と合意した戦略核削減の履行も足踏みしている。

日本は禁止条約制定の交渉開始に反対票を投じた。 北朝鮮の核、ミサイル開発が加速し、米の「核の傘」を弱める条約を支持できないという判断も働いた。 一方で、核を持つ国々と持たない国々の「橋渡し役」を果たすと言う。 平均年齢が 80 歳を超えた広島、長崎の被爆者たちは禁止条約の制定を切望している。 国連での会議では、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表が講演する予定だ。

政府は条約の交渉に加わり、唯一の被爆国として、各国指導者に被爆地訪問を呼び掛けるなど、核のない世界を目指す姿勢を積極的に発信していくことが重要だ。 かぎを握るのはやはり核保有国だろう。 条約制定の会議に集まる国々は連携して、米ロに軍縮を促す努力が欠かせない。

- 中日新聞社説 2017 年 3 月 27 日 -


年内締結目指し交渉加速 = 保有国不在で会議開幕 - 核禁止条約

【ニューヨーク】 核兵器を法的に禁止する初の条約制定に向けた交渉会議が 27 日、国連本部で始まった。 核軍縮の議論の停滞を背景に、メキシコやオーストリアなどの非核保有国主導で実現にこぎ着けた会議だが、保有国や米国の同盟国の大半はボイコット。 「保有国不在」のまま、交渉は年内の条約締結を目指し走りだした。

「非常にシンプルな条約にしたい。」 交渉会議に参加したメキシコ外務省のミゲル・ルイス・カバニャス次官(人権・多国間問題担当)は 27 日、時事通信とのインタビューで強調した。 次官はさらに「何年もかかるような長い交渉プロセスにはしたくない。 短く明確で的を射た条約にしたい。」と表明。 メキシコは、核兵器の禁止という原則を定める簡略な内容とすることで早期締結を実現したい意向で、31 日までの会議で各国にこうした方針への理解を求め、6 - 7 月の次回会議で条約案に合意するシナリオを描く。

27 日の交渉会議では、不参加を表明するため発言機会を求めた日本を除く参加各国が、条約の必要性を訴えた。 メキシコの方針に支持が広がれば、7 月合意の可能性は高まる。 一方、米英仏ロ中の核保有国やインド、パキスタン、イスラエルなどは、会合を欠席した。 ヘイリー米国連大使は北大西洋条約機構 (NATO) 加盟国など約 20 カ国の代表と共に声明を発表し、「現実的になるべきだ。 北朝鮮がこの条約に同意すると思うか。」と条約の実効性に疑問を呈した。

- 時事通信 2017 年 3 月 28 日 -


あなたがここにいてほしい … 核禁止条約の日本席に折り鶴

「あなたに、ここにいてほしかった - -。」 こんな英語のメッセージが添えられた折り鶴が、核兵器禁止条約交渉が続く国連の議場にある日本政府代表団席に置かれている。 会議をボイコットした日本政府に対する落胆と批判のメッセージだ。

日本政府は、交渉会議の場で演説したにもかかわらず、途中から「不参加」を表明してボイコット。 折り鶴を置いた関係者は朝日新聞の取材に、「日本政府に対して、国民ならびに被爆者に対して責任があるんですよ、ということを気づかせたい」と回答。 今後も唯一の被爆国の日本に問題提起を続けていく考えを明かした。 折り鶴は平和のシンボルとされ、オバマ前米大統領が昨年 5 月に広島を訪問した際も自作の折り鶴を広島市に寄贈している。 (ニューヨーク = 松尾一郎)

- 朝日新聞 2017 年 3 月 29 日 -


日本の交渉不参加、被爆者「裏切られた」 核禁止条約

米ニューヨークの国連本部で開かれている「核兵器禁止条約」の交渉会議で 28 日、カナダ在住の被爆者、サーロー節子さん (85) が演説し、日本の交渉不参加を痛烈に批判した。 「自国に裏切られ、見捨てられ続けたという被爆者の思いを深めた」と述べ、参加国に対し、核兵器を違法化する条約の制定を求めた。 サーローさんは「広島に人々を招くことで、核軍縮で重要な役割を果たしていると日本政府は言うが、米国の『核の傘』に入り続けるのなら、空っぽでごまかしの行動だ」と非難した。

13 歳で被爆したサーローさんは「広島を思い出すとき、認識不能なまでに黒ずみ、膨らみ、溶けた肉体の塊となり、死が苦しみから解放してくれるまでの間、消え入る声で水を求めていた、4 歳だったおいの姿が脳裏に最初によみがえる」と証言。 人類は二度と核兵器の苦しみを体験するべきでないとの確信から、生存者たちは核廃絶の運動を続けてきたと説明した。 (ニューヨーク = 金成隆一)

- 同 上 -

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