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中国指導部対トランプ氏 (6)

「もし、北朝鮮が崩壊したら」と問われた時、その後のシナリオが全く読めません。 本来は、中国対米国の問題ではなく、中国対朝鮮半島(主体は韓国になるのでしょうが)の問題であるはずなのですが、韓国は、日本に向ける顔、中国に向ける顔、そして米国に向ける顔を、それぞれ変えるようでは、この基本的(核心的)問題に確たる考えを持っているようには、外から見る限り見えてきません。

領土の問題を、中国は核心的利益と呼んではばかりません。 当然、軍事行動を起こし、北朝鮮の一部、あるいは全部を中国の領土と主張するのは目に見えて明らかです。 地政学的にも旧高句麗の領土が含まれているのですから、その主張を取り下げることなど考えられないのです。 ウクライナの紛争直後、ロシアはクリミア半島を奪い去りました。 それが現実の世界であることを認識して、先ずは、韓国の人々のコンセンサスが必要不可欠なのです。

朝鮮半島有事には中国の軍事介入に備えよ

<中国による北朝鮮への軍事介入を、これまでアメリカは想定してこなかった。 トランプ政権は一刻も早く、中国を巻き込んだ危機管理体制の整備や、再統一後のビジョンを確立すべきだ。>

朝鮮半島で戦争が起こる可能性が日に日に増している。 ドナルド・トランプ米政権は、北朝鮮が核兵器でアメリカを攻撃する能力を手に入れることは断じて認めない立場だ。 だが北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は核・ミサイル開発を止めるどころか減速する気配すらない。 緊張緩和のために譲歩する気はどちらにもなく、米政府は軍事攻撃以外の選択肢は残り少ないと警告した。

朝鮮半島で戦争が起きれば壊滅的な結果になるだろう。 米議会調査局の推計によれば、最初の数日で最大 30 万人の死者が出る。 数百万人の難民と大規模な人道危機が発生し、戦災復興には少なくとも 1 兆ドルかかる。 だが悲劇はそれだけではない。北朝鮮で米軍と韓国軍が対峙するのは北朝鮮軍だけではすまない可能性が高い。

北朝鮮に自ら戦争を仕掛けることはないが、ひとたび朝鮮半島が不安定化するか戦場になったら黙っていないのが中国だ。 朝鮮半島をアメリカの好きにさせるはずがない。 急ピッチで軍事力増強を続けてきた中国は、いざとなれば数万人の警察や兵士を北朝鮮に投入する可能性が高い。 ところが今のアメリカは、このシナリオに対する準備がまったくない。 中国との不用意な軍事衝突を避け、アジアでのアメリカの長期的な利益を死守するため、トランプ政権は戦後の北朝鮮をアメリカにとって好ましい姿に導くための計画策定にすぐ着手すべきだ。

中朝軍事同盟は形骸化

1961 年の中朝友好協力相互援助条約による軍事同盟はあっても、もはや中国が捨て身で北朝鮮を助けに行くことはない。 米朝関係は近年急速に悪化したし、金は中国の習近平国家主席といまだに対面すらしていない。 中国政府とつながりの深い高官も次々に粛清した。 中朝関係の改善を図って 11 月下旬に中国特使が北朝鮮を訪問したが、金は面会を拒否した。

中国が介入に踏み切る場合、戦略目標は少なくとも 3 つある。 1 つ目は、北朝鮮の体制崩壊による難民流入をコントロールできる範囲内に収めること。 中国政府はすでに中国北東部吉林省の北朝鮮国境の町に難民キャンプを建設する計画を進めている。 2 つ目は、人民解放軍が北朝鮮の主要な核・ミサイルの開発施設を制圧すること。 北朝鮮の核兵器を接収し国外への流出を阻止することは、米中両国に共通する目標だ(必ずしも協力はし合えない)。

第 3 の目標は、朝鮮半島に大きな軍事プレゼンスを確立することだ。 戦後の朝鮮半島を政治的軍事的にどう統治するかという交渉の中で、最大限の影響力を確保するためだ。 シリア内戦に介入して中東での影響力を強めたロシアのように、中国も朝鮮半島再統一後の政治に大きな発言力を確保しようとしている。 これこそが、アメリカにとって最も厄介な問題だ。

中国の軍事介入がほぼ不可避であることは、アメリカの対北朝鮮戦略にとって重要な意味を持つ。 戦後の混乱と不安定をどうやって収束させるのか、米中間で議論を開始しておくべきだ。 米中の利害が一致する計画を立てるとなると障壁はあまりに高い。 しかし対話チャンネルさえ作っておけば、少なくとも作戦上で米中が衝突する危険は回避できる。 また野心的な目標だが、核兵器や核関連物質の管理で役割分担ができれば尚いい。

レックス・ティラーソン米国務長官は以前、米中間で対話が進んでいると発言したが、形ばかりで中身は不十分なままだ。 中国は歴史的に見ても、朝鮮半島有事における危機管理対策に及び腰だ。 北朝鮮が崩壊しても構わない、と言うかのようなシグナルを出したくないからだ。

だが、それも変わりつつある。 対北朝鮮政策は、中国国内で最も激論が戦わされている外交分野だ。 台湾や南シナ海の問題とは違い、対北朝鮮政策では、学者やシンクタンク、政府関係者が従来と異なる新たなアプローチを提唱することを中国共産党指導部も公然と認めている。 それだけ解決策を必要としている証拠だ。 トランプ政権は、圧力と外交で中国に対北制裁を強化させることにかけては近年にない成果を上げた。 同じ手法で危機管理対策に関する対話に中国を巻き込むことができれば、より良い結果が生まれるだろう。

米中軍事衝突の危険

だがそれ以前に、米政府には取り組むべき課題がある。 戦争開始直後からほぼ確実に発生する甚大な人道的・経済的困難に対処するために、トランプ政権が準備した形跡はほとんどない。 その準備がなければ、米中両軍が危険な距離まで接近し、双方の意図を読めないまま軍事衝突に発展する危険が高まるだけだ。

そもそも米政府は、朝鮮半島における長期的なビジョンについて、いまだに基本方針を示していない。 再統一後の米韓同盟の行方や、在韓米軍の駐留を継続するかどうかも、明らかにしていない。 トランプ政権が早急に方針を打ち出さなければ、アメリカの長期的な利益を守り、なにより重要な韓国との連携に向けた提案の作成にかける時間が足りず、慌てふためく羽目になる。 一方の中国は、韓国が朝鮮半島を再統一し、米軍の同盟国となり、米軍が駐留する核兵器保有国が誕生する、という最悪のシナリオの回避へ向けて必死で先手を打とうとしてくるに違いない。

中国の軍事介入を阻止することは、アメリカには不可能だしやるべきでもない。 だが人民解放軍との予期せぬ軍事衝突を起こすリスクを減らすための計画策定はすぐにも始めなければならないし、アメリカが北東アジアで今後果たす役割についても中国に指図されないようにしなければならない。 もしアメリカが無計画のままなら、失敗は目に見えている。 (イーライ・ラトナー)

- NewsWeek 2017 年 12 月 22 日 -


トランプ政権、対テロより中ロ対抗を優先 初の国防戦略

米国防総省は 19 日、トランプ政権で初の「国家防衛戦略 (NDS)」を発表した。 中国とロシアを「長期的な戦略的競合相手」と位置づけ、対テロよりも優先事項に掲げた。 抑止力拡大のため、米軍を強化する必要性を強調した。 マティス国防長官は発表に際し、ワシントン市内で講演。 「テロとの戦いは継続するが、米国の安全保障の最大の焦点はテロではなく、大国同士の競争だ」と述べ、中国とロシアを名指しした。

公表された国防戦略の要旨は、中国とロシアについて「国際秩序を損なおうとしている」とし、国境など現状変更を試みる「修正主義勢力」と位置づけた。 中国については、南シナ海の軍事拠点化などを警戒。 「軍隊の近代化計画を進め、短期的にはインド太平洋地域の覇権を目指し、将来的には米国に取って代わる地球規模の優位を狙っている」とした。 ロシアについては、ウクライナなどを念頭に周辺国の国境を侵犯していると批判。 核兵器の拡大や近代化にも警戒を示した。 (ワシントン = 杉山正)

- 朝日新聞 2018 年 1 月 20 日 -


「帝国主義的な大国いらない」 米国務長官、中国を批判

ティラーソン米国務長官は 1 日、訪問先の南部テキサス州で講演し、「中南米に自国民の利益だけを追求する帝国主義的な大国はいらない」と、中南米諸国で経済的な影響力を強める中国を名指しで批判した。 「(中国の)不公正な通商慣行は地域の製造業を傷つけている」とも述べた。

ティラーソン氏は 1 日から始まったメキシコやアルゼンチン、ペルーなどへの歴訪に先駆けて講演。 中国が中南米を自国の勢力圏に組み入れようとしていると指摘し、「自国の利益を拡大するために貴重な資源を搾取し、しばしば現地の法律や人権を無視している」と批判した。 米国の「裏庭」とも呼ばれる中南米で存在感を強める中国を強く牽制した形だ。 ティラーソン氏は、ロシアに関しても米国に友好的ではない国々に武器輸出をしており、「警戒を要する」と述べた。 (ワシントン = 峯村健司)

- 朝日新聞 2018 年 2 月 4 日 -

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