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海自の護衛艦いずも、九段線に接近 レーダーに機影

[護衛艦いずも艦上(南シナ海)] 日本を出港して 1 カ月半がたった 6 月中旬、南シナ海に長期派遣中の海上自衛隊のヘリコプター空母「いずも」が、航海の様子を報道陣に公開した。 いずもはシンガポールから東南アジア諸国の士官 10 人を乗せ、ヘリによる哨戒や訓練をしながら南沙諸島の方角へ航行。 中国が九段線と呼ぶ付近に差し掛かったところで、レーダーが同国軍のものらしき機影をとらえる場面があった。

軍艦を派遣する意味

「レーダー探知 - -。」 いずも艦内のスピーカーから、くぐもった声が短く流れた。 周囲を飛ぶ航空機を、レーダーが捕捉したことを知らせるアナウンスだ。 国籍や飛来の目的は不明だが、いずもが航行していたのが九段線付近であったことから、中国軍機の可能性があった。 中国は南シナ海の地図上に、九段線と呼ばれる破線を引き、その内側は自国の管轄権が及ぶと主張している。 南沙諸島や西沙諸島で岩礁を埋め立て、空港を建設するなどして軍事拠点化を進めている。

これに対し、米軍は人工島の周囲 12 カイリ(22 キロ)以内に軍艦を派遣して中国の領海ではないとけん制する「航行の自由作戦 (FON)」を実施してきた。 日本の自衛隊も、FON には参加しないまでも、徐々に南シナ海への関与を強めている。 全長 248 メートルと海自で最も大きく、最も目立つ護衛艦いずもを長期間派遣しているのはその一環だ。

軍艦はその国の領土の延長とみなされる。 いずもを南シナ海に派遣すれば、そこに日本の国が出現したことになる。 いずもが所属する第一護衛隊群(神奈川県横須賀市)の伍賀祥裕群司令は、艦内で取材に応じ、「プレゼンス(存在)を示すために動いているばかりではない」としつつも、「結果としてそう映ることはあると思う」と語った。 「レーダー・ロスト(喪失)。」 いずも艦内に再びアナウンスが流れた。 レーダーに映った機影は、圏外に外れた。

南シナ海で哨戒活動

いずもが日本を出港したのは 5 月初め。 同月中旬にシンガポールで国際観閲式に参加後、フィリピンへ寄港してドゥテルテ大統領を艦上に招待した。 さらに米空母ロナルド・レーガンとの共同訓練をこなし、シンガポールへ戻って 6 月 19 日から 23 日まで報道陣と東南アジア諸国連合 (ASEAN) 10 カ国の士官を乗せた。 海と空がまだ、暗闇に包まれている 20 日午前 7 時。 遠くの空がときおり稲光で照らされる中、いずもの甲板から SH-60 ヘリコプター 3 機が飛び立った。 ヘリコプターの任務は、船の進路や周囲に異常がないかどうかを確認すること。 いずものヘリコプターは 1 日に何度もこうした発着艦を繰り返す。

米軍は自衛隊が南シナ海で哨戒活動を行うことに期待を寄せるが、日本は東シナ海にも対応しなくてはならないとして、遠く南シナ海で定期的に哨戒する計画はないとしてきた。 いずもの甲斐義博艦長も「パイロットの技量維持などの訓練もある」と述べ、全てが哨戒のための飛行ではないと説明する。 しかし、長期航海中のいずもが何度もこの海域でヘリコプターを飛ばすことは、結果としてその役割を果たすことにつながる。

同乗した ASEAN 士官

今回のいずもの長期航海には、護衛艦「さざなみ」が同行した。 2 隻は波が穏やかな南シナ海上を、ときに近づき、ときに離れ、陣形を組み替えながら航行している。 大型タンクを備えるいずもから、ホースを伸ばしてさざなみに給油をすることもある。 洋上を航行しながら給油をするには、2 隻が速度と針路を合わせて並走しなくてはならない。 両艦の間隔はわずか 40 メートル。 方位が 1 度でもずれれば衝突の恐れがある。 21 日午後、燃料が少なくなったさざなみに対し、いずもは 150 キロリットル、ドラム缶 750 本分の軽油を 2 時間かけて給油した。

 

報道陣と ASEAN 士官が同乗中、いずもは捜索・救難や射撃、旗を使った通信の訓練も行った。 10 人の士官は訓練を見学したほか、海洋法などの講義を受けた。 日本側の狙いは、中国が南シナ海への進出を強める中、この海域で起きている情勢の認識や、国際法の順守の重要性を ASEAN 各国と共有すること。 タイ海軍のカシカン・テチャティラワ中尉は報道陣の取材に、個人的な意見とした上で「法の下では各国が平等でなければならない。 大国の発言が大きく、小国の発言が小さくあってはならない」と語った。

いずもは 21 日から 22 日にかけ、シンガポールの北東約 500 キロの海域に到達した。 そのまま進めば中国の人工島がある南沙諸島に近づくが、そこで折り返した。 日本は九段線の存在を認めてはいないが、その線をかすめた形だ。 ロシア軍との共同訓練のため、バルト海へ向かう中国軍の艦艇とすれ違う可能性もあったものの、遭遇することはなかった。 いずもとさざなみはこの後、インド洋へ向かう。 チェンマイに寄港し、7 月 10 日から 17 日まで、米国、インドとの共同訓練「マラバール」に参加する。

- Reuters 2017 年 6 月 23 日 -


米海軍の新型空母、42 年ぶり就役 新世代型の 1 番艦

米海軍の最新鋭の原子力空母「ジェラルド・R・フォード」が 22 日、就役した。 「米軍の再建」を目指すトランプ政権の政策の一環で、就役した新型空母としては 42 年ぶりとなる。 これで米海軍は空母 11 隻態勢となり、緊迫する朝鮮半島や軍拡を進める中国などに対応する構えだ。 この日、バージニア州ノーフォークの基地で開かれた就役式には、トランプ大統領やマティス国防長官らが出席。 トランプ氏は「フォード」が「世界最高の艦艇であり、同盟国は安心し、敵国は恐怖におびえるだろう」と演説。 さらに「私の政権下で米国がより強くなっているという世界に対するメッセージだ」と強調した。

フォード級は現在の米海軍の主力空母であるニミッツ級に代わる新世代型だ。 同艦は 2009 年から建造が始まり、「フォード」は、艦載機を 75 隻搭載できる。 電磁力で艦載機を発射させる最新鋭の電磁カタパルトを採用している。 これまでの蒸気カタパルトよりも、艦載機の出撃を 3 割以上増やすことができる。 フォードの艦名は、海軍将校出身のフォード元大統領(1974 - 77 年)にちなんでいる。 米軍は約 430 億ドル(約 4 兆 7 千億円)を投じ、計 3 隻のフォード級空母建造を計画。 2 番艦「ジョン・F・ケネディ」を建造中で、3 番艦となる「エンタープライズ」の建造も近く始まる予定だ。 (ワシントン = 峯村健司)

- 朝日新聞 2017 年 7 月 23 日 -


中国戦闘機、米偵察機に 90m まで異常接近 東シナ海

米国防総省のデービス報道部長は 24 日の会見で、東シナ海の上空を飛行していた米偵察機 EP3 が 23 日に中国軍の戦闘機「殲(せん) 10」 2 機から異常接近を受けたことを明らかにした。 米偵察機は衝突を避けるため針路を変えたという。 米側は、軍と外交の両ルートで中国側に抗議した。

デービス氏によると、現場は山東省・青島沖の国際空域。 2 機の「殲 10」のうち 1 機が高速で米偵察機の下方に飛んできた後、速度を落としながら前方に回り込んだ。 ロイター通信によると、約 90 メートルまで急接近したという。 デービス氏は「国際規範に反している」と、中国軍の対応を批判した。 中国軍機による米軍機への異常接近は、5 月中旬に東シナ海で、同下旬には南シナ海で起きており、両軍機による緊張が高まっている。 (ワシントン = 峯村健司)

- 朝日新聞 2017 年 7 月 25 日 -

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