周辺国に対する戦後処理 (11)

日本の企業は、一つ一つ、淡々とけりを付けていくのが、賢明だと考えます。 今、肝要なのは、かような行為の積み重ねなのでしょう。 今、日本にとって最も大切にしたい韓国との外交関係が少しでも好転することに繋がれば良いのです。

【徴用工訴訟】 三菱重工に 1,200 万円賠償命令 元挺身隊員ら損賠訴訟判決

【ソウル = 桜井紀雄】 第 2 次大戦末期に三菱重工業の名古屋市内の軍需工場などへ動員された元朝鮮女子勤労挺身隊の韓国人女性と遺族の計 2 人が、同社に損害賠償を求めた訴訟の判決が 8 日、韓国南西部の光州(クァンジュ)地裁であり、地裁は、請求を認め、同社に計約 1 億 2,300 万ウォン(約 1,200 万円)の支払いを命じた。 聯合ニュースによると、女性らは中学生ごろの 1944 年、名古屋にある三菱重工の航空機製作所で、賃金なしに「強制労役」させられたとして、女性と遺族がそれぞれ、1 億 5 千万ウォンと 3 千万ウォンの損害賠償を求めて提訴していた。 女性は「お金も稼げ、勉強もできるとだまされた」と主張していた。

日本政府は、当時の個人請求権は 1965 年の日韓請求権協定で消滅したとの立場だ。 しかし、韓国最高裁が 2012 年、植民地支配に絡む被害に対する個人請求権は消滅していないとの判断を示した。 その後、元徴用工や元挺身隊員が日本企業に損害賠償を求めた訴訟で、各地の地裁や高裁が最高裁判断に基づき、企業側に賠償を命じる判決を相次ぎ出している。

元徴用工らが日本企業を相手に韓国で起こした訴訟は、聯合ニュースによれば計 14 件に上る。 別の女性ら 5 人が三菱重工に賠償を求めた訴訟でも、1、2 審で賠償命令が出て同社が上告した。 11 日には別の元挺身隊員や遺族計 4 人が同社を相手に起こした訴訟の判決が予定されている。

- 産経新聞 2017 年 8 月 8 日 -


徴用の歴史紹介をユネスコへ報告、韓国報道官「遺憾」

世界文化遺産に登録された長崎市の軍艦島(端島炭坑)など「明治日本の産業革命遺産」に関し、日本政府が東京に新設する総合情報センターで徴用の歴史を紹介する方針をユネスコ(国連教育科学文化機関)に報告したことについて、韓国外交省の報道官は 5 日、「遺憾」との立場を表明した。 報道官は「日本は国際社会に約束した通り、強制労役の犠牲者を記憶にとどめるための措置を、誠実に速やかに履行することを求める」と論評した。

日本政府は 1 日、センターを東京に設置し、戦時中に朝鮮半島出身の労働者が軍艦島などで働いたことを含め、多様な情報を発信するとの方針を盛り込んだ報告書をユネスコに提出した。 これに対し、韓国では「日本が軍艦島の朝鮮人強制労働についての説明資料を現地から 1,200 キロも離れた場所に置く(ハンギョレ新聞)」など批判的な報道が相次いでいた。 同遺産の登録をめぐっては 2015 年の登録時、韓国政府が「自国民が強制労働させられた施設が含まれている」と問題視。 日本が「犠牲者を記憶にとどめるために適切な措置を説明戦略に盛り込む」と表明し、韓国を説得した経緯がある。(ソウル = 武田肇)

- 朝日新聞 2017 年 12 月 5 日 -

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軍艦島旧島民ら「地獄島じゃない」 証言動画公開で誤解に反論

一般財団法人「産業遺産国民会議」は 23 日までに、ホームページで 2015 年に世界文化遺産に登録された長崎市の端島(はしま)炭坑(通称・軍艦島 = 戦艦「土佐」に似ていることから軍艦島と呼ばれるようになった)で朝鮮人労務者と一緒に作業した旧島民などの証言を収めた動画を公開した。

端島の誤解を広めるきっかけとなった「長崎在日朝鮮人の人権を守る会」が編集・出版した『軍艦島に耳を澄ませば 端島に強制連行された朝鮮人・中国人の記録』や、長崎市にある「岡まさはる記念長崎平和資料館」で配布されているパンフレットなどを取り上げて反論している。 「端島は地獄島」とのプロパガンダには、「朝鮮人労働者は鉄格子のある建物に収容された」、「食事を十分に与えられなかった」などといった強制労働を主張する証言が伴うが、旧島民の証言からは異なる当時の様子が浮かび上がってくる。

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「鉄格子のあるみすぼらしい建物には朝鮮人労働者たちが収容された。」 岡まさはる記念長崎平和資料館で無料配布されるパンフレットには、こんな記載があるが、動画で旧島民たちは一斉に反論する。 「鉄格子のはまってるところは見たことないです。」 「朝鮮の人なんか、もうみんな、その頃は炭坑が(好)景気でよそから来ますから、家族連れでね。」 「鉄格子のあったら大ごとだったね。 ほかの者にも聞いてよかたい。」

このほか、パンフレットには「朝鮮人労働者たちを監視するための高さ 10 メートルの塔もあった」とある。 ある旧島民は「そんな余分な塔を建てるような土地はないはずだからね、端島の場合は。朝鮮人のかしらに朝鮮人の従業員管理は責任もたせとったけんね」と語る。 別の旧島民も「10 メートルなんて建ったらすぐにわかるはずですよね」と語るなど、誰もが塔の存在を否定する。

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「1 日 12 時間 - 16 時間まで炭坑労働する中、食べ物は豆かすで作ったおにぎり 2 つが全部だった。 栄養失調で倒れる人が多かった。 お腹がすいてよく動けなくて炭車の間で挟まって死んだ人もいた。」 「家畜用の飼料である豆粕を私たちに食べさせた。」 『軍艦島に耳を澄ませば』は、こうした朝鮮人労働者の証言を実名で載せている。 朝鮮人労働者だけが長時間労働を強いられ、十分な食事を与えられていなかったというのだ。

だが、旧島民の 1 人は「12 時間も 16 時間も働かされたと書いていますけれども日本人でも同じです。 日本人も一緒になって仕事をさせられたんですね。」と語る。 食事についても別の旧島民は「戦時中は日本人も一緒さ。 そんな米ばっかり食えないもんね。 配給はしれてるからね。」と証言する。 「日本人だって食えなかったんだから。僕らだって。結局、おかゆ食べてたんだからね。」との声もあった。

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「炭坑長は警察署に電話して私たちの騒動を告げ、警官を呼び寄せた。 7 人はみな縛り上げられ、滅多打ちにされ、そのまま警察署に連行された。」 「一人の警官が私の頭部めがけて切りつけてきた。 私は咄嗟に頭を下げて避けようとしたが、首の後ろを切られて鮮血が噴出し、地面に倒れて意識を失った。」

『軍艦島に耳を澄ませば』には警察による暴行などの証言が複数記録されている。 しかし、旧島民の一人は「それがでたらめっていうのはね、警察官は坑内のことはしないんですよ、絶対。 保安監督の監督所がするから坑内のことは警察がするもんじゃない。 坑外の出来事は警察がするけど、第一、それが間違ってる。」と事実誤認を指摘する。

さらに、端島に駐在していた 2 人の警察官をよく知っていたという旧島民は「映画じゃないですしね。 端島の現場を知っとる人間が見たら、なんとまあよくこういうことを捏造して書いたもんじゃな、と感心するぐらい。」と苦笑する。 炭坑にとって日本人であれ朝鮮人であれ、労働者は貴重だった。 基本的には作業の停滞につながるような暴行はなかったというのが旧島民らの記憶だ。

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旧島民の証言記録動画を編集した、国民会議専務理事の加藤康子内閣官房参与によると、こうした形の情報発信は日本政府と国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)と連動していない。 動画は英語と韓国語版もある。 ウェブサイトは「軍艦島の真実 - 朝鮮人徴用工の検証 -」。 (田北真樹子)

- 産経新聞 2017 年 12 月 24 日 -


元徴用工訴訟、日本企業に賠償命じる初判断 韓国最高裁

朝鮮半島が日本統治下にあった戦時中に日本本土の工場に動員された韓国人の元徴用工 4 人が、新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国大法院(最高裁)は 30 日、個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、同社の上告を退けた。 これにより、同社に 1 人あたり 1 億ウォン(約 1 千万円)を支払うよう命じた判決が確定した。 韓国の裁判所で、日本企業に元徴用工への賠償を命じる判決が確定したのは初めて。

日本政府は、元徴用工の補償問題は 1965 年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取る。 今後の両国の対応次第では、外交や経済関係に打撃を与える可能性があり、日韓は新たな火種を抱えることになった。

原告は同社が賠償に応じない場合、資産差し押さえなどの強制執行手続きができる。 弁護団は、同社の資産は韓国にないとして、第三国での手続きを視野に入れる。 同様の訴訟は、新日鉄住金に加えて不二越(富山市)など約 70 社を相手にした計 15 件があり、今回の最高裁の決定は他の訴訟の判決にも影響しそうだ。 また、同様の訴訟が新たに相次いで起こされる可能性も高い。 (ソウル = 武田肇)

- 朝日新聞 2018 年 10 月 30 日 -

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元徴用工判決めぐる日本の反応 韓国で広がる反発・批判

日韓協力委員会に所属する塩崎恭久衆院議員らが 5 日、韓国の政党関係者らと懇談した。 元徴用工への損害賠償を命じた 10 月 30 日の大法院(最高裁)判決を巡り、塩崎氏は「日韓関係の法的基盤を根本的に覆す」として、判決を事実上修正するための措置への協力を求めたが韓国側から肯定的な反応は得られなかった。 判決を厳しく批判する日本の政治家の発言に、韓国では反発も広がっている。

韓国の専門家の間では、判決が 1965 年の日韓請求権協定を覆すとの意見も出ているが、韓国の与野党は国民感情を刺激する徴用工問題について、基本的に判決を支持する立場をとっている。 韓国の第 1 野党、自由韓国党によれば、塩崎氏らは 5 日午後、同党幹部らと会談した。 塩崎氏は判決について「決して受け入れられない。 国際法違反の事案について、是正を含めた必要な措置が必要ではないか。」と迫った。

塩崎氏は、韓国政府が判決後に「未来志向の関係」を強調したことを評価する一方、「今後、韓国政府の対応が日韓関係に大きな影響を与える」とし、韓国側の努力を促した。 しかし、自由韓国党の金秉準(キムビョンジュン)非常対策委員長は「我々がいつでも過去の問題で被害者だった点を日本は特に念頭に置いて欲しい」と指摘。 「日本がいつも我々に被害を与えたという感情が非常に強い」とも述べ、韓国の国民感情の点から容易に日本側の指摘に同意できないとの考えを示した。

また、韓国の政党やメディアは、安倍晋三首相が徴用工について「朝鮮半島出身の労働者」と述べたり、河野太郎外相が判決を「国際社会への挑戦」と表現したりしたとして、強く反発している。 韓国野党、正しい未来党は公式ホームページの論評で、安倍首相の発言について「恥知らずの言葉と言わざるを得ない。 いつまで妄言で強制徴用被害者たちの恨みから目を背け続けるのか」と批判。 SBS 放送は 5 日のニュースで、「河野外相が判決直後から、韓国政府に責任があるとの発言を続けている」と批判した。 (ソウル = 牧野愛博)

- 朝日新聞 2018 年 11 月 5 日 -

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徴用工、日本単独で国際司法裁提訴へ 韓国の不当性周知 駐韓大使は召還せず

政府は 5 日、韓国の元徴用工をめぐる訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる確定判決を出した問題で、韓国政府が賠償金の肩代わりを行う立法措置などを取らない限り、国際司法裁判所 (ICJ) に提訴する方針を固めた。 また、裁判手続きに関する韓国側との交渉、折衝などが必要なため、長嶺安政駐韓大使の召還は行わない。

ICJ で裁判を開くには原則として紛争当事国の同意が必要で、手続きには、(1) 相手国の同意を経て共同付託する、(2) 単独で提訴した上で相手国の同意を得る - という 2 つの方法がある。 政府は韓国から事前に同意を得るのは難しいことから単独提訴に踏み切る。 その場合も韓国の同意は得られないとみられ、裁判自体は成立しない可能性が高い。 だが、韓国に同意しない理由を説明する義務が発生するため、政府は「韓国の異常性を世界に知らしめることができる」と判断した。

河野太郎外相は既に、徴用工問題が 1965 (昭和 40)年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」としていることや、判決が国際法に照らしていかに不当かを英文にまとめ、在外公館を通じて各国政府やマスコミに周知させるよう指示している。 政府は今回の判決だけでなく、2015 (平成 27)年の慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意に対する韓国側の不履行など、度重なる韓国の不誠実な対応についてもアピールする機会とする考えだ。

政府は今回の判決は日韓基本条約の基盤を崩壊させかねない問題だと重視しており、政府高官は「今回は徹底的にやる」と語る。 韓国側が現在、「韓国政府内でいろいろと判決への対応を検討している」と釈明しているため当面は対応を見守るが、外務省幹部は「おそらく韓国は有効な措置は取れないだろう」とみている。 この問題をめぐり、安倍晋三首相は 1 日の衆院予算委員会で、「国際裁判も含めあらゆる選択肢を視野に入れて毅然として対応していく」と述べていた。

- 産経新聞 2018 年 11 月 6 日 -


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