周辺国に対する戦後処理 (9)

韓国に呼応するかのように、中国でも戦前の日本企業の労働者強制連行に対する損害賠償が提訴されました。 日本は、いずれの国に対しても請求権を放棄し、賠償金を払っていますので、現実には、当事国内の問題であるはずなのですが、何故か、政治問題に変化しているのは残念です。

「強制連行」中国でも日本企業を集団提訴へ 国交正常化後で初

【北京 = 矢板明夫】 第二次大戦中、「強制連行」され日本国内の炭鉱などで働いた中国人元労働者や遺族らが 26 日にも、複数の日本企業を相手に損害賠償を求め北京市内の裁判所に提訴する。 複数の関係者が明らかにした。 提訴が受理された場合、1972 年の日中国交正常化以降、中国国内で日本に民間賠償を迫る初の本格的な集団訴訟となる。

関係者によれば、提訴するのは北京市出身の趙宗仁氏ら元労働者と遺族代表ら 30 人以上で、原告団はさらに増える予定。 対象は、三菱マテリアルなど旧財閥系を中心とした日本企業で、対象企業も最大 35 社程度となる可能性があるという。

提訴に先立ち、中国の法曹関係者や元政府高官、日本専門家で構成する「顧問団」が、連名で全国人民代表大会(全人代 = 国会に相当)に対し、対日民間賠償への支援を求める請願を提出した。 請願は「日本企業の行為は国際的な人道に反する」、「わが国は元労働者の人権を守らなければならない」などの内容。 戦時賠償をめぐっては、72 年の日中共同声明で中国が日本への請求権を放棄したことを受け、日本政府は「政府間の交渉により問題は解決済み」との立場をとっている。

しかし中国では、個人が企業を相手取る個人賠償は別の問題だとの主張が強く、中国政府は事実上介入しない立場を取ってきた。 元労働者らは 90 年代以降、日本の裁判所で日本企業を提訴。 中国国内でも提訴の動きをみせてきたが、中国側はこれまで、日中関係への配慮などから提訴を受理してこなかった。 韓国での元徴用工による日本企業提訴の流れを受け、今回の集団提訴で中国側がどのような対応をみせるのかが注目される。

- 産経新聞 2014 年 2 月 26 日 -


強制連行訴状 中国で受理 共同声明後初 相次ぐ提訴必至

【北京 = 白石徹、新貝憲弘】 日中戦争時に中国から強制連行され、日本国内で厳しい労働を強いられた中国人元労働者と遺族らが北京市第一中級人民法院(地裁)に損害賠償などを求める訴状を提出していた事案で、地裁は 18 日、訴状を受理した。 日本政府は 1972 年の「日中共同声明」によって解決済みとの立場で、中国の裁判所も 72 年以降、受理したことはなかった。 今回受理したことで、同様の訴訟が中国各地で起こされるのは確実。 日中関係の悪化が懸念される。

原告側弁護士によると、元労働者と遺族ら約 40 人は先月 26 日、北京の地裁に訴状を提出。 一人当たり百万元(約 1,700 万円)の損害賠償と、謝罪広告の掲載を求めている。 開廷の期日は未定。 中国の司法機関は共産党の指導下にあり、事実上、習近平政権の判断により判決が左右される。

訴えられたのは三菱マテリアルと日本コークス工業(旧三井鉱山)の 2 社。 原告側は戦時中、北海道や九州の炭鉱に連行され、強制的に働かされたと主張している。 今回の原告団は札幌や福岡の裁判所にも提訴したが、日本の最高裁が 2007 年、「日中共同声明によって個人の請求権は認められない」と最終的に判断。 このため、原告団は中国内で訴訟を起こす準備を進めてきた。

中国外務省の華春瑩副報道局長は先月 26 日、強制連行問題について「現在に至るまで解決されていない歴史上の問題」と表明し、「中国内の裁判所が法律によって処理する案件だ」と明言していた。 原告側の康健弁護士は 18 日、記者会見を開き「(日中共同声明があっても)日本企業は責任を免れることはできない」と述べた。

- 東京新聞 2014 年 3 月 19 日 -


強制連行、原告 1,000 人規模 中国で訴訟、拡大も

戦時中に日本に連行され過酷な労働を強いられたとして中国人元労働者ら 40 人が日本企業 2 社を相手取り中国の裁判所に起こした損害賠償請求訴訟で、原告に加わる意向を示した被害者と遺族が千人近くに達していることが 22 日分かった。 今後さらに増える可能性があり、被告企業の対応が焦点となりそうだ。

被告 2 企業の対応焦点

原告側は今年 2 月、三菱マテリアルと日本コークス工業(旧三井鉱山)を相手取り、1 人当たり 100 万元(約 1,650 万円)の損害賠償と謝罪広告の掲載を求め、北京市第 1 中級人民法院(地裁に相当)に提訴。 同法院は今月 18 日、中国の裁判所として初めて訴えを受理した。

起訴状に記載した原告は 40 人だが、原告側代理人の康健弁護士によると、訴訟に加わる意向を示している元労働者と遺族は千人近くに及ぶ。 訴えが受理された後も遺族などから訴訟に加わりたいとの問い合わせが相次いでおり、康弁護士は「原告は最終的に 3 千人前後に膨らむ可能性もある」との見通しを示した。(北京 = 林望)

- 朝日新聞 2014 年 3 月 23 日 -


強制連行訴訟、中国・河北省の元労働者らも訴状提出

戦時中、中国人が日本に連行され過酷な労働を強いられたとされる問題で、河北省唐山市の元労働者や遺族 19 人が 26 日、日本政府と日本企業 2 社に損害賠償などを求める訴えを起こすため、唐山市中級人民法院(地裁に相当)に訴状を提出した。 原告代理人らが 27 日、明らかにした。 日本政府と三菱マテリアル、日本コークス工業(旧三井鉱山)に 1 人当たり 180 万元(約 3 千万円)の支払いと謝罪広告の掲載を求める。

強制連行を巡っては、別の原告団が北京で両社を相手取り損害賠償請求訴訟を起こし、裁判所が 18 日に受理した。 唐山の提訴は北京の動きに影響を受けた。 被告に日本政府を加えていることや準備期間の短さなどから、裁判所が受理するかどうかは不透明だ。(北京 = 林望)

- 朝日新聞 2014 年 3 月 27 日 -


謝罪と賠償求め「中韓共闘」 … 強制連行訴訟

【石家荘(中国河北省) = 牧野田亨】 戦時中に中国から強制連行されたとする中国人元労働者と遺族 149 人が 2 日、三菱マテリアル(旧三菱鉱業)を相手取り、謝罪と損害賠償を求める訴状を河北省高級人民法院(高裁)に提出した。 中国では強制連行に絡む訴状提出が相次いでいるが、今回は最大規模となる。 韓国で同様の訴訟に勝訴した原告団も現地を訪れて支援を表明しており、中国と韓国が歴史問題で共闘する動きが強まっている。

訴状では、元労働者が戦時中に、日本軍に強制連行され、過酷な労働を強いられたとして 1 人当たり 150 万 - 200 万元(約 2,500 万 - 約 3,350 万円)の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた。

原告側は、韓国での三菱重工業を相手取った訴訟で勝訴(上告中)した元労働者の遺族と弁護士、支援団体の代表を招待。 1 日夜の交流会では、司会者が「中韓が力を合わせ、日本政府と日本企業に謝罪と賠償を求めよう」と呼びかけ、2 日朝の犠牲者への追悼式では韓国の遺族らも献花するなど「中韓共闘」をアピールした。

中国側の狙いは、「韓国の経験を学ぶ(原告団の戴秉信代表)」ことだ。 韓国の張完翼弁護士は「当時の資料の収集や争点の絞り込みなどの経験を喜んで提供したい」と語る。 中国での強制連行を巡る訴訟は北京、河北省で 2 月以降、6 件の訴状が法院に提出され、1 件は正式に受理された。 その背景には歴史問題で日本に圧力をかける習近平(シージンピン)政権の姿勢があるとみられる。

今年 1 月に 1909 年に黒竜江省ハルビン駅で初代韓国統監・伊藤博文を暗殺した朝鮮独立運動家・安重根の記念館を同駅に開設。 習主席は 3 月下旬の中韓首脳会談で、「光復軍」と呼ばれる朝鮮の抗日部隊が駐屯した陝西省西安市に、記念の石碑が間もなく完成することを明らかにしている。 今回の訴状提出について、三菱マテリアル広報・IR 部は「事実を確認中のため、現段階ではコメントを差し控えたい」としている。

- 読売新聞 2014 年 4 月 2 日 -


韓国元徴用工ら 252 人が提訴、日本企業への賠償請求拡大

太平洋戦争中に日本の工場などで働かされた韓国人元徴用工と遺族計 252 人が昨年 12 月、日本企業 3 社を相手取りソウル中央地裁に損害賠償請求訴訟を起こしていたことが分かった。 7 日付の韓国紙、京郷新聞などが報じた。

韓国では最高裁が 2012 年、元徴用工らの個人請求権を認める判断を示して以降、日本企業に損害賠償を求める訴訟が相次いだが、同種の訴訟では最大規模。原告側は今後、原告を千人以上集め、対象企業を計 16 社に拡大し追加提訴する準備も進めているという。 3 社は三菱重工業と住友重機械工業、昭和電工。 原告側代理人には米国の弁護士も加わっており、韓国で勝訴すれば、日本企業の米国法人の資産を差し押さえる手続きを取る方針としている。

- 共同通信 2014 年 6 月 7 日 -


韓国徴用工訴訟 不二越に最大 1,030 万円賠償命令

戦時中に朝鮮半島から徴用され、機械メーカー・不二越(本社・富山市)の軍需工場で働かされた韓国人女性や遺族らが同社に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は 30 日、原告 28 人に対し、1 人当たり 8 千万ウォン(約 820 万円) - 1 億ウォン(約 1,030 万円)の支払いを命じた。 同社は控訴する方針。 徴用工の請求権をめぐっては、日本政府は 1965 年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」との立場を取っている。 韓国政府も同様の見解だったが、2012 年に韓国最高裁が個人の請求権を認める判決を出し、元徴用工側が勝訴する判決が相次いでいる。

判決は、当時 12 - 18 歳だった女性らは進学や十分な賃金を保証するなどとだまされて、強制連行され、劣悪な環境で働かされたとし、不二越の「反人道的な不法行為」を認定した。 不二越は「当社の主張が認められなかったのは遺憾だ。 控訴審で正当性を主張していく。」とした。(ソウル = 東岡徹)

- 朝日新聞 2014 年 10 月 30 日 -


韓国の元徴用工ら、日本企業 72 社を新たに提訴

戦時中に徴用され、日本企業の工場などで働かされた韓国の元徴用工や遺族ら 668 人が 21 日、三菱重工業など日本企業 72 社を相手取り、損害賠償を求める訴訟をソウル中央地裁に起こした。 請求額は当初は 1 人あたり 1 千万ウォン(約 110 万円)だが、今後、1 億ウォンまで増やすとしている。 韓国では同種の訴訟が相次いでいるが、原告数では最大規模となる。

同訴訟を進めるアジア太平洋戦争犠牲者韓国遺族会は、2013 年 12 月にも 252 人が日本企業 3 社を提訴している。 元徴用工への賠償問題は 1965 年の日韓請求権協定で解決済みというのが日本政府の立場。 だが、韓国の大法院(最高裁)が 12 年 5 月に、元徴用工の個人請求権を認める判断を示して以降、韓国では元徴用工側が勝訴する判決が相次いでいる。(ソウル = 貝瀬秋彦)

- 朝日新聞 2015 年 4 月 21 日 -


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