憲法 9 条と国防、そして軍縮 (1)

パウエル米国務長官の、日本国憲法、第 9 条について「日本の人々にはとても、とても強い思い入れがある」との言葉。 どうして、この人が大統領になってくれなかったのか ・・・ 米国にとっても、そして全世界にとっても大きな損失であったと思えてしようがありません。

日本人にとって憲法 9 条は、確かに悩ましい問題ですが、果たして、これを捨ててまでならなければならないほど、国連常任理事国に価値があるとは、筆者には思えませんし、日本の国際貢献が十分に果たせないとも考えていません。

今、人類が目指さなければならないのは、人類の自滅の前に、例外や条件無しの「全世界的な軍縮」であったはずです。

武器輸出 3 原則見直しの方向示す 首相の私的諮問機関

政府が年末に策定する新たな「防衛計画大綱」に向けて設けられた小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会(座長 = 荒木浩・東京電力顧問)」は 27 日の会合で、論点整理の文書をまとめた。

自衛隊を国際協力に積極活用することや、事実上、一切の武器輸出を禁じている武器輸出 3 原則の見直しを進める方向を示した。 懇談会はこれをたたき台に議論を深め、9 月中に首相に報告書を提出する。

懇談会は 4 月末から 6 回の会合を重ねてきた。 27 日の第 7 回会合では、これまでの議論を
(1) 安全保障と防衛力の基本的考え方
(2) 脅威認識
(3) 東アジアの戦略環境
(4) 危機管理体制
(5) 情報
(6) 日米安保体制
(7) 国際平和協力
(8) 自衛隊の任務・体制
(9) 計画方式
(10) 人材育成
(11) 産業・技術基盤(武器輸出 3 原則を含む) - - の 11 項目に分け、
それぞれについて主な意見を記す形で論議の方向を示す文書が事務局から提出された。

「基本的考え方」としては、日本への侵略に備えて、必要最小限度の基盤的な防衛力を保有するという、これまでの「基盤的防衛力構想」について、「考え直す必要がある」との意見を記した。 大量破壊兵器の拡散や国際テロなどの「新たな脅威」に備え、国際平和協力のために自衛隊を活用するには、これまでの同構想はそぐわないとの考えからだ。 事務局によると、基盤的防衛力構想の考え方は維持しつつ「基盤的」の定義を改めるべきだという意見と、構想そのものを抜本的に見直すべきだという主張があり、今後詰めるという。

「脅威認識」や「戦略環境」などでは、「新たな脅威への対応が重要」とテロなどへの対処の必要性を指摘。 一方で、北朝鮮を名指しし「いざという時の防衛も重要」とするなど、従来型の「伝統的脅威」に備える必要も認め、「伝統的脅威の強いこの地域では、日米安保体制に基づく抑止態勢が重要」とした。

各論では、海外への武器輸出を事実上禁止している「武器輸出 3 原則」について、見直しを求める意見を複数記した。 「米国などと共同で装備の開発を進めることは『死の商人』となることとは異なる」、「全面禁止は不合理。 平和国家として、国際紛争の助長を回避するとの本来の趣旨に戻ることが急務。」とした。

三原則は当初、
(1) 共産諸国
(2) 国連決議により武器の輸出が禁止されている国
(3) 国際紛争の当事国またはその恐れのある国 - - への輸出を認めないとの内容だったが、
76 年に三木内閣が対象地域以外への武器輸出も「慎む」との政府統一見解を公表した。 これを見直すよう求める意見だ。

国際平和協力のため、自衛隊の海外派遣を積極的に進める必要性も指摘した。 海外派遣は日米同盟の強化につながるとの意見や、「自衛隊の任務で、国際協力が運動競技会への協力と同等の位置づけになっているのはおかしい」といった意見を列挙した。 現在の自衛隊法では、自衛隊の海外活動は「付随的任務」と位置づけているが、これを国土防衛と同じ「本来任務」に格上げすべきだという主張だ。

また、そのまま放置すれば日本に対する攻撃に至る恐れがある場合などの「周辺事態」で米軍を支援する「後方地域支援」についても、本来任務に改めるべきだとする意見を盛り、これを通じて日米同盟を強化する方向を示した。 現在の防衛大綱は 95 年に改定された。 政府は、その後「新たな脅威」が深刻化したことや、テロ特措法やイラク特措法に基づく自衛隊海外派遣を進めたという状況の変化を受け、年末に大綱を改定する方針だ。

- 朝日新聞 2004 年 7 月 27 日 -


多国籍軍参加の恒久法制定へ、政府が準備室設置を検討

政府は、自衛隊の多国籍軍参加をそのつど特別措置法をつくらなくても可能にする恒久法(一般法)制定に向け、準備にあたっている政府内の組織を拡充する方向で調整に入った。 現在、内閣官房に置いている作業チームの人員を増員し、準備室とする方向だ。 法案提出の時期は、イラクで多国籍軍に参加している自衛隊をめぐる情勢を見極め、慎重に探る方針だ。

現在の作業チームは外務省、防衛庁などの職員で構成している。 当初は今年前半をめどに大綱をまとめる予定だったが、自衛隊のイラク派遣などに人手をとられ、ずれこんでいる。 そこで、外務省職員らを増員し、組織を格上げして大綱策定作業を急ぐ方向で調整している。 恒久法制定は福田前官房長官や外務省が主導し、来年の通常国会への提出を視野に準備を進めてきた。 ただ、首相は 6 月、「じっくりと議論しなければいけない問題だ。 まだ恒久法制定は早いのではないか。」と記者団に述べている。

- 朝日新聞 2004 年 8 月 1 日 -



来春メキシコで初の非核地帯国会議 米などに軍縮要求へ

核保有国に核兵器廃絶を迫る新アジェンダ連合の中心国メキシコのルイス・アルフォンソ・デアルバ大使(ジュネーブ駐在・軍縮担当)は 7 日、来年 5 月の核不拡散条約 (NPT) 再検討会議の直前に、四つの非核地帯条約加盟国による初の国際会議を開くことを長崎市内で明らかにした。 100 カ国超の規模をめざし、米国などに核完全廃絶の実行を求める。

大使によると、会議はメキシコで開かれる。 ニューヨークですでに準備会合を開いており、中南米、アフリカ、南太平洋、東南アジアの各非核地帯から 20 カ国以上が参加している。 不確定要素はあるものの「100 を超える加盟国の大多数は参加する見込み」といい、今秋にも正式決定する。 会議は、核保有国に軍縮の実行を求めるほか、NPT 非加盟国に加盟を呼びかけ、核拡散防止を話し合うことになる見込み。 合意事項は国連に報告する。 「NPT 体制をより強固にするのが狙い。 非核国の団結を強め、保有国に強い圧力をかけたい。」と大使はいう。

日本など非核地帯外の国や核保有国にも国連を通じて支持を求めている。 オブザーバー参加の要請も検討している。 デアルバ大使は原水爆禁止世界大会に招かれ長崎入りした。 9 月からの国連総会で、軍縮問題を話し合う第 1 委員会の議長に選出されている。 NPT 再検討会議は 5 年に 1 度開かれる。 00 年には「核兵器の完全廃棄の明確な約束」を求める最終文書を全会一致で採択した。 しかし米国は「使える核」としての小型核兵器の研究に乗り出すなど、「約束」が実行されているとはいえない状況だ。

- 朝日新聞 2004 年 8 月 8 日 -


常任理入り「9 条の再検討必要」 米国務長官が会見

パウエル米国務長官は 12 日、朝日新聞など在ワシントンの報道機関計 7 社と会見し、日本が国連安全保障理事会の常任理事国になることを目指すなら、日本国憲法 9 条が現状のままで問題がないかどうか検討する必要があるとの考えを示した。 また、イランのアザデガン油田開発に日本が乗り出すことに対し、同国の核兵器開発疑惑を理由に再考を促した。 北朝鮮の核問題では、北朝鮮が求める重油支援への参加を拒絶する一方、資金面で核の解体を支援する意向を示し、ウラン濃縮計画も含めた核の完全な放棄を改めて求めた。

ワシントンの国務省で会見したパウエル長官は、憲法 9 条について「日本の人々にはとても、とても強い思い入れがある」との認識を示し、憲法 9 条の「重要さ」や日本の憲法に 9 条が盛りこまれている背景を理解しているとも述べた。 しかし、「日本が国際社会で十分な役割を演じ、安保理でフルに活躍する一員となり、それに伴う義務を担うというのであれば、憲法 9 条は(現状のままで問題がないかどうか)検討されるべきだろう」と明言した。

ただし、「憲法 9 条を修正するか、変更するかどうかは、もちろん絶対的かつ完全に日本の人々が決めるべき問題だ。 それは皆さんの憲法だからだ。」とも語った。 さらに「米国が決して意見を言うつもりはない」と付け加えた。

一方、イランについては「核兵器を開発しようとしていることが明白だと思う」と指摘。 国際原子力機関 (IAEA) 理事会が同国の核査察に対する協力が不十分と非難していることや、同国のハラジ外相がウラン濃縮用の遠心分離器の製造再開を表明したことにも触れたうえで、「日本の政府と経済界は、こうしたことを考慮したうえで、イランが投資をすべき場所か、エネルギー関連の商取引をすべき場所かどうかを判断するよう望みたい」と述べ、アザデガン油田開発への参加を再考するよう強く促した。 さらに「日本政府は私たちの見解を知っている」と述べ、こうした意向はすでに日本政府に伝えていることも明らかにした。

一方、北朝鮮の核問題については、6 月の第 3 回 6 者協議で米国が解決に向けた具体策を示し、北朝鮮が核の放棄を表明すれば暫定的な「安全の保証」を与え、3 カ月の準備期間後に行動を起こせばテロ支援国家指定や経済制裁の解除も検討すると表明したことを踏まえ、「私たちは柔軟性を示した」、「次に動かなければいけないのは北朝鮮だ」と指摘。 ボールは北朝鮮の側にあるとの立場を強調した。 また、94 年の米朝枠組み合意を破って北朝鮮がウラン濃縮計画に着手したことを批判し、「(米国は)同じ道は歩まない」と述べ、北朝鮮が米国に求める重油支援への参加も拒否した。

さらに日中韓と東南アジア諸国連合 (ASEAN) が進める東アジア共同体構想について「こうした枠組みの必要性については、まだ納得していない」としながらも、「米国と地域の友人たちの 2 国間関係が損なわれないのなら参加は自由だ」と述べた。

- 朝日新聞 2004 年 8 月 13 日 -


核軍縮停滞に危機感 NPT 再検討会議、NGO が意見

国連本部で開かれている核不拡散条約 (NPT) 再検討会議に参加する軍縮 NGO (非政府組織)が 11 日、共同意見をまとめた。 北朝鮮やイランの核開発疑惑に端を発する不拡散問題に注目が集まる中、NGO は停滞する核軍縮への危機感を表明している。

同日に終わる各国演説の最後に代表が読み上げる。 朝日新聞が入手した全文によると、NGO 側は「核兵器を廃絶する意志なくしては、NPT 体制への信頼もおぼつかなく、ひそかに核兵器開発を狙う試みをやめるのも難しい」と論じ、米ブッシュ政権など核保有国は「まず(軍縮の)意志を示すことが重要だ」と主張している。 また、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理施設について「中止すべきだ」との考えを示した。 拡散防止のためには原子力の平和利用の制限もやむを得ず、すべてのウラン濃縮、再処理施設を多国間管理に置くべきだとの考えからだ。

一方、NGO 側は、イランについて「非難するだけでなく、イランが NPT に協力しようとする面も見るべきだ」と指摘。 北朝鮮に対しては「危機を招いた責任は米国と北朝鮮双方にあるが、特にブッシュ政権の強硬姿勢に負っている」と述べ、イランや北朝鮮の責任を問う会議の大勢とは異なっている。 30 以上の NGO や反核団体が意見を起草。 全 63 ページの文書にまとめた。 会議は、議題が決まっておらず、12 日から始まる予定の小委員会の開催が危ぶまれている。

- 朝日新聞 2005 年 5 月 12 日 -


inserted by FC2 system