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北朝鮮がイスカンデル短距離弾道ミサイルを発射

5 月 4 日に北朝鮮は複数発の短距離ミサイルを日本海側に発射しました。 そして 5 月 5 日に発射の様子を映像で公開、多連装ロケットと共に「戦術誘導兵器」を発射したことを示しました。 なんと北朝鮮の言う戦術誘導兵器とは驚くべきことに、ロシア軍の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を忠実にコピーしたものでした。 イスカンデルのコピー品の存在自体は以前に軍事パレードで登場して知られていましたが、発射が確認されたのは今回が初になります。 ミサイルを 2 個のリング状クランプで固定し、発射直後にリング状クランプを爆破ボルトで吹き飛ばす方式はイスカンデルだけの特有の構造です。

イスカンデル短距離弾道ミサイルのコピーは 2018 年 2 月 8 日の朝鮮人民軍創建記念の軍事パレードで初めて登場しています。 この時に登場した発射車両はオリジナルのロシア製よりも車幅の狭い中国製のトラックでしたが(フロント窓枠が 2 個)、2019 年 5 月 4 日にミサイル発射を行った車両は元のロシア製に近い車幅の広い形状のトラックでした(フロント窓枠が 3 個)。 タイヤの直径も後者の方が大きく、路外機動性能は高くなるでしょう。

イスカンデルは弾道ミサイルである以上、北朝鮮に弾道ミサイル技術を用いた発射行為を禁じた国連安保理決議に違反します。 また韓国と北朝鮮が結んだ南北軍事分野合意書もこれで危うくなるでしょう。 その上、北朝鮮がロシア軍の現役主力兵器をコピーしたことは韓国軍と在韓米軍に深刻な衝撃を与えてしまいます。

液体燃料のスカッド短距離弾道ミサイルが固体燃料のイスカンデルに置き換わっていけば、発射に要する時間が大幅に短くなり発射前の撃破が著しく困難になります。 またロシア製に近い能力を持っているなら、精密誘導能力を持っていることになります。 イスカンデルは旧式のスカッドとは比較にならない高性能な短距離弾道ミサイルです。 北朝鮮は保有する短距離ミサイルの中で最も性能が高く危険な新型兵器を発射してアメリカと韓国を威嚇してきたのです。

- JSF = 軍事ブロガー 2019 年 5 月 5 日 -


北朝鮮が再びイスカンデル短距離弾道ミサイルを発射

5 月 9 日夕方に北朝鮮が短距離弾道ミサイル 2 発を発射しました。 北朝鮮の北西部から東方向に発射され朝鮮半島を横断し日本海に着弾、うち 1 発は水平距離 420km を飛翔しています。 5 月 4 日に朝鮮半島東部から発射された短距離弾道ミサイルに続き、僅か 5 日後に再びミサイル挑発が行われました。

翌 5 月 10 日に北朝鮮は発射したミサイルの写真を公開。 ミサイルそのものは 5 月 4 日に発射されたイスカンデル短距離弾道ミサイルと同一ですが、移動発射機は装軌式(クローラー式)で初めて確認される車両です。 同じく装軌式の移動発射機を用いていた準中距離弾道ミサイル「北極星 2 号」は戦車型の車体でしたが、装軌式イスカンデルは足回りはクローラー式ですが操縦席キャビン部分は前方に突き出したトラックのような構造をしています。 ただし装輪式イスカンデルより車体全長は若干短くなっているようにも見えます。

韓国軍合同参謀本部によると 5 月 9 日に北朝鮮から発射された 2 発のミサイルは水平距離 420km と水平距離 270km、最高到達高度はどちらも 50km とされています。 水平距離 420km で最大到達高度 50km の弾道ミサイルならば打ち出し角度が約 20 度の浅い弾道(ディプレスト軌道)となるので、最もよく飛ぶ角度の 45 度(最小エネルギー軌道)で飛ばした場合は水平距離 600km を超える最大射程を有していると推定できます。

イスカンデルは以前から最大射程が INF 条約の制限である射程 500km を超えているのではと見られていました。 本家ロシア版イスカンデルと北朝鮮版イスカンデルは全く同じ仕様ではないので、これをもってロシアが INF 条約に違反していたとは言えませんが、イスカンデルの本当の能力を推定する材料の一つとなるでしょう。

なおイスカンデルは通常の弾道ミサイルより低い高度を飛ぶことで弾道ミサイル防衛システムを突破できると本家のロシアが喧伝していますが、弾道ミサイルは上昇初期段階でロケットエンジンの燃料を使い切る特性がある以上、最大到達高度 50km を維持しつつ飛び続けることはできません。 高度 15 - 20km 以下の低い高度に降りて来たところを待ち構えれば PAC-3 地対空ミサイルで迎撃が可能ですし、迎撃可能高度 40 - 150km の THAAD 地対空ミサイルならば高度 50km だろうと迎撃が可能です。

イスカンデルが低い高度で軌道変更を行いながら飛翔するのは、実際にはミサイル防衛突破用というよりは発射地点を容易に解析されないようにすることが主目的です。 そしてこの目的ならばアメリカの ATACMS 短距離弾道ミサイルでも同じことを行えます。 弾道ミサイルである以上、巡航ミサイルのように常に噴射を続ける大気吸入式ジェットエンジンを持っているわけでもなく、滑空ミサイルのように滑空用の大きな主翼を持っているわけでもないので、軌道変更ができるといっても小さな範囲でしか行うことはできません。

- 同 上 2019 年 5 月 10 日 -


北朝鮮が弾道ミサイル発射、日本まで到達可能な新型の可能性

7 月 25 日早朝、北朝鮮が元山付近から日本海に向けて弾道ミサイルを発射しました。 韓国軍合同参謀本部の発表によると 2 発が確認され、水平方向の飛距離は 430km と 690km、最大高度はどちらも 50km と伝えられています。 飛距離 430km の方は 5 月に発射されたイスカンデル短距離弾道ミサイルの模倣品とほぼ同じ飛行性能であり、同じ物である可能性が高いと考えられますが、飛距離 690km の方は 5 月の発射時より遠くまで飛行しており、更なる改良型か別の新型ミサイルである可能性があります。

水平距離 430km で最大到達高度 50km の弾道ミサイルならば打ち出し角度が約 20 度の浅い弾道(ディプレスト軌道)となるので、最もよく飛ぶ角度の 45 度(最小エネルギー軌道)で飛ばした場合は水平距離 600km を超える最大射程を有していると推定できます。 これはオリジナルのロシア製イスカンデル短距離弾道ミサイルに近い性能数値です。

水平距離 690km で最大到達高度 50km の弾道ミサイルならば打ち出し角度が約 15 度の浅い弾道(ディプレスト軌道)となるので、最もよく飛ぶ角度の 45 度(最小エネルギー軌道)で飛ばした場合は水平距離 1200km を超える最大射程を有していると推定できます。 これはオリジナルのイスカンデルの最大射程を大きく超えており、ノドン準中距離弾道ミサイルに匹敵する最大射程を有していることになります。

つまり韓国軍の発表した水平距離と最大高度の数値が正しい場合、今回の北朝鮮のミサイルが浅い角度で発射された弾道ミサイルとするならば、能力的な最大射程は 690km ではなく 1200km であり日本まで余裕をもって届く準中距離弾道ミサイルである可能性が出て来ます。 日本への直接的な脅威となる上に、短距離弾道ミサイルまでなら問題視しない態度を取っていたアメリカを揺さぶる形になります。 北朝鮮の脅迫が新たな次の段階に移ったことになるので、韓国軍の確認した数値が本当に正しいか精査して慎重に判断する必要があります。

翌 7 月 26 日に韓国軍合同参謀本部は飛距離 690km を 600km に修正、最大高度は 50 - 60km のままでしたので、能力的な最大射程は推定 800 - 1,000km の短距離弾道ミサイルとなります。 これはスカッド ER 並みの射程となり、距離 800km で大阪を、距離 1,000km で静岡を狙える能力があります。

- 同 上 2019 年 7 月 25 日 -


北朝鮮、弾道ミサイル 2 発発射 = 東部から 250 キロ飛行か

【ソウル、ワシントン】 韓国軍などによると、北朝鮮は 31 日午前 5 時(日本時間同)すぎ、東部・元山付近から北東の日本海上に向け飛翔体 2 発を発射した。 韓国軍は「短距離弾道ミサイル」と発表した。 発射したのは午前 5 時 6 分ごろと同 27 分ごろで、約 250 キロ飛行、最高高度は約 30 キロと推定されている。韓国政府は発射を受け、国家安全保障会議 (NSC) 常任委員会を開き、対応を協議した。

韓国軍合同参謀本部は「さらなる発射に備え、関連動向を監視し、対応態勢を維持している」と表明した。 複数の米メディアによると、米政府当局者も発射されたのは短距離弾道ミサイル 2 発と考えている。 日本の防衛省は「わが国の安全保障に直ちに影響を与えるような事態は確認されていない」と発表。 日本の領域や排他的経済水域 (EEZ) への弾道ミサイルの飛来も確認していない。

北朝鮮は 25 日、元山近くから短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体 2 発を発射。 北朝鮮メディアによれば、金正恩朝鮮労働党委員長の立ち会いの下、「新型戦術誘導兵器」の発射が行われた。 韓国軍当局者は地元記者団に対し、「25 日発射のミサイルと似た種類の可能性を念頭に分析中だ。 試験発射とみられる。」と述べた。 正恩氏は、8 月に予定される米韓合同軍事演習の中止を要求しており、演習に対抗するため、発射を繰り返す可能性もある。

- 時事通信 2019 年 7 月 31 日 -

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