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中国大手 32 社が「不審死 & 経営難」海南航空と同じ運命をたどる!?

<7 月にフランスで「事故死」した中国大手航空会社・海南航空の王健会長。 ナゾを解くカギは米国亡命中の「中華文春砲」こと郭文貴のリークにあるが、この問題、まだこれで終わらない。>

今、おそらくはあの馬雲(ジャック・マー)も含む、中国の大企業家たちが不安にさいなまれているのをご存じだろうか。 そして、大企業家でない私・李小牧も。 発端となったのは、今年 7 月 3 日に中国の大手航空会社「海南航空」を傘下に持つ海航集団(HNA グループ)の王健会長 (57) が、フランス出張中に死亡したことだ。 南仏プロバンス地方の教会で、写真を撮るために高さ 15 メートルもの壁によじ登ろうとして転落したという。 つまり事故死ということになるが、この公式発表を信じる人など一人もいないだろう。 少しでも事情を知っている人ならば、100 人中 100 人が暗殺されたと信じている。

海南航空のバックにいるのは習近平の右腕

まず、簡単に経緯を説明しよう。 海南航空は中国 4 大航空会社の一角を占める。 他の航空会社が北京、上海、広州という大都市を拠点としているのに対し、海南航空は中国南部の海南省という田舎(失礼!)が本拠地だ。 1989 年創業と歴史も浅いが、爆発的成長を続けてきた。 積極的な買収によって、香港エクスプレス、新華航空、山西航空、長安航空などを子会社に。 さらには中国内外で不動産事業を展開するほか、経営危機に陥ったドイツ銀行の筆頭株主になるなど、投資を武器に事業を拡大してきた。

投資を支えたのは銀行の融資だ。 湯水のように投資を得て、その莫大な資金力で好き放題に買収をくり広げることによって、海南航空は成長した。 なぜ、中国の銀行は海南航空に融資したのだろうか? 同社の投資手腕を評価したから、ではない。 中国では、銀行から金を借りるために必要なのは事業計画でも担保でもなく政治力だ。 強力な政治家をバックに持っているからこそ、無尽蔵に金が借りられたのだ。

ところが昨年 7 月、米国亡命中の大富豪、郭文貴が海南航空の問題を暴露した(郭がどんな人物か、については私の過去のコラムを読んでほしい)。 同社のバックにいるのは習近平の右腕・王岐山であること、「白手套(= 白手袋、違法マネーをロンダリングする仲介者を意味するスラング)」として王岐山の資金源になっていたことを明かした。

このリークをきっかけに海南航空は経営危機に追い込まれていく。 というのも、郭文貴のリークは世界的な注目を集めたからだ。 中国共産党ですらもみ消しは難しい。 この状況で政治力によって銀行融資を獲得するようなことがあれば、政敵にとっては格好の批判材料となってしまう。 いつでも銀行融資が得られるという前提で投資していたのだ。 頼みの綱が失われれば、あっという間に資金が枯渇してしまう。

かくして海南航空は、燃料代が払えない、航空機メーカーに代金を支払えないといった異常事態に陥る。 買い漁った海外資産を売却してなんとか現金を捻出しようとしたが、資産はすぐに売れるものでない。 結局、今にいたるまで資金繰りに苦しむ状況からは脱していない。

口封じのために殺されたのか

この 1 年間にわたる「海南航空狂騒曲」の果てに起きたのが、王健会長の死である。 この流れを見れば、事故死という発表を信じるほうが難しい。 8 月 9 日にはフランスの地方紙「ル・プロヴァンス」が王健の死には謎が残ると報道。 一度は事故死と断定した地元警察が再調査を始めたと報じている。 実は死の 1 カ月前には王健の死を予感させる出来事があった。 郭文貴も定期的に出演するユーチューブ番組「路徳訪談」での一幕だ。 匿名のコメンテーター、大衛小哥が「王健に真実を話しさせることができるかもしれない」ともらしたのである。

詳しい事情については語らなかったが、王健が追い詰められていたのは明らかだ。 口封じのためにいつ殺されても不思議ではない状況にあった。 おそらく、身の安全を守る方法があるとすれば、海外に亡命し、全ての真実を明らかにすることだけだっただろう。 全ての秘密を公開してしまえば、わざわざ海外まで暗殺者を送るほどの重要性はなくなるからだ。 あるいはこの番組が引き金になってしまったのかもしれない。 結局、王健は真実を語ることなく怪死を遂げることになったのだった。

郭文貴がさらなるリークを予告している

だが、彼の不幸な死によって終わったわけではない。 海南航空の経営危機はまだ続いているし、さらなる追い打ちがかかった。 米ニューヨーク・ポスト紙によると、ニューヨークに保有するビルを売却するよう、米政府の対米外国投資委員会 (CFIUS) に命じられたという。 このビルはトランプタワーのすぐ近くに位置している。 安全保障の観点から保有が許されなかったようだ。

郭文貴が海南航空に関するリークを始めてから 1 年、ついにアメリカ政府が動き出したというわけだ。 習近平政権と深く結びつく海南航空への締め付けは、中国共産党に対する制裁にほかならない。 今後さらに大きく展開する可能性が高いだろう。 そして、海南航空にまつわる一連の問題以上に衝撃的なのは、郭文貴がまだまだリークの「ネタ」は残っていると公言している点だ。 「路徳訪談」において、アリババグループ(ジャック・マーの会社だ)、テンセント、ワンダグループなど、中国を代表する大手企業 32 社について、今後秘密を公開していくと予告している。

世界的企業へと成長した海南航空ですら、郭文貴のリークに耐えられず、現在の惨状に追い込まれた。 今後 32 社もの大企業がもし同じ運命をたどるなら、もはや 1 企業の問題を超え、中国経済全体に関わる一大事だ。 経営者にとっては、業績以上に自らの命を不安に思っているだろう。 中国で大企業を経営するためには政治との太いパイプが必要だ。 いわば全ての大企業家は政商であり、暴かれれば致命傷となる「闇」を持っている。 恐るべき情報網を持つ郭文貴がどれだけの事情を把握しているのか、戦々恐々としているわけだ。

そして、私もドキドキしている(笑)。 中国の政治家とつながりもなければ、後ろめたいこともない私だが、言論人として依頼された番組には積極的に出演している。 その 1 つが郭文貴も出演する「路徳訪談」なのだ。 この番組が中国政局に与えた巨大な影響力を考えれば …。 私のドキドキを理解してもらえるだろうか。 (李小牧)

- NewsWeek 2018 年 8 月 14 日 -


海航グループ会社、債務返済滞る、3 億元

【重慶 = 多部田俊輔】 中国の複合企業、海航集団(HNA グループ)のグループ会社でレジャー施設の運営などを手掛ける海航創新が 3 億元(約 50 億円)の債務返済を滞らせていることが 13 日明らかになった。 海航集団は今年に入って海外のホテルや不動産などを売却しているが、資金繰りが厳しい実態が改めて浮き彫りとなった。

海航創新は 2016 年 9 月上旬、信託会社から期間 2 年間で 3 億元を借り入れた。 信託会社側が 13 日、この借入金について期日までに返済されていないと発表した。 海航創新の筆頭株主、海航旅游集団が債務保証義務を果たしていないことも明らかにした。 海航創新は同日、3 億元の債務返済が遅れていると発表。 浙江省の観光開発プロジェクトで歴史的な問題にかかわり資産が凍結されたことから「資金繰りが厳しくなっている」と理由を説明した。

海航集団は海外での M & A (合併・買収)で急成長した。 中国当局が 17 年に借金に依存して買収を繰り返す企業の監視を強化したことから、資金繰りが急速に悪化。 当局の指導に従って、米ホテル大手、ヒルトン系列会社の持ち株や不動産などを相次いで売却した。 海航集団は共同創業者で董事長だった王健氏が 7 月に出張先のフランスで急死しており、経営の先行きは不透明な状況が続いている。

- 日経新聞 2018 年 9 月 14 日 -

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中国人トラブル「外交問題化」 … 現地大使館介入

【上海 = 吉永亜希子】 中国人が外国でトラブルに見舞われた際に、現地の中国大使館が自国民保護などの名目で介入し、相手側に謝罪などを求めるケースが相次いでいる。

AFP 通信によると、英バーミンガムで 9 月末、与党・保守党が開いた香港の自治などに関するイベントで、中国中央テレビの女性記者が講演者に「反中国的だ」などと叫び、退室を求めた運営側の男性の顔を平手打ちした。 記者は暴行の疑いで警察当局に一時拘束された。 これに対し、在英中国大使館は「いかなる組織であっても、香港問題に干渉することには反対する」と猛反発。 運営側に記者への謝罪を求めた。

- 読売新聞 2018 年 10 月 8 日 -

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