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女優・小林涼子、ドイツの国際映像祭の授賞式で英語のスピーチ

ヒロインを務めた宮城県豊里町発の地方再生映画『ひとりじゃない』が銀賞受賞

東日本大震災で家族を失った被災者の孤独をテーマに、宮城県登米市豊里町発で制作された地方再生映画『ひとりじゃない』が、ドイツの国際映像祭「World Media Festival Television & Corporate Media Awards 2019」で SILVER Award (銀賞)を受賞した。 5 月 15 日にハンブルグで行われた授賞式には、ヒロインを演じた女優の小林涼子、鐘江稔らが登壇。 小林は着物姿で英語のスピーチを行った。

『ひとりじゃない』は孤独死防止をテーマに、鐘江監督がオリジナルストーリーを書き下ろした地方再生映画。 沿岸被災地で妻と子供の 3 人を亡くした男、赤井誠(稲森誠)。 被災地から離れた地に移り住んで独り暮らしを余儀なくされ、亡くなった家族が忘れられず、後追い自殺も考えながら、鬱々とした日々を過ごしていたが、自転車で旅をする稲川美奈子(小林涼子)との出逢いが、赤井の暮らしを徐々に変化させていく … という物語。

豊里町でロケが行われ、メインキャスト以外には豊里町の住民も出演。 美奈子役を演じた小林は、このような地方発信の映画に出演するのは初めてで、チャレンジのつもりでオファーを受けたという。 「ワールド・メディア・フェスティバル」は 2000 年に設立された、情報、教育、エンターテイメントについての映像、テレビ番組、印刷物、ウェブ動画などの優秀な作品を、国際規模で表彰する現代メディア国際コンペティション。 今回、宮城県登米市豊里町の人々が英語の字幕を付け、公民館からエントリー、今回の銀賞受賞につながった。

小林は授賞式に鮮やかな着物姿で登場し、英語でスピーチを行った。 まずは「この映画を製作したスタッフ、宮城県登米市豊里町の人々、そして私にとってこの賞を授与することは大きな名誉です。 日本のこのような小さな地域から、そして、そこに住む方々の情熱から生まれた映画がこのような名誉ある賞を受賞するのは、とても驚きです。」と受賞の喜びを語る。

そして「2011 年の大地震の後、家族、家、農場、彼らの事業、日本中が沢山のものを失いました。 最初は落胆し、再起するエネルギーもありませんでしたが、それでも諦めず、お互い励ましあい、着実に前を向いています。 勇敢な姿、そして、優しさと温かさを撮影期間を通し私自身も沢山感じました。 私たちスタッフはもちろん、豊里町の方々と心と魂を込めて挑んだこの映画によって、東北に住む方々、そして観て下さった世界中の皆様に希望やインスピレーションを与えてくれる事を願います。」と、世界に向けて力強いメッセージを送る。

そして、「授賞式で着物を着る為に着付けの練習をし、日本から着物を背負っていくのは骨が折れましたが … その甲斐あって沢山の方々に着物を褒めていただき、写真を撮っていただき、それを通して日本へ関心を持っていただけたように感じます。 今後もこのような機会をいただけた時には着物を着られるよう、また東京に戻っても練習をしたいと思いました。」と、ユーモアを交えながら、映画を通じた親善大使としての一翼も担っていた。

小林は、今回の受賞について「私を含め監督やスタッフは、もちろん一生懸命やりましたが、何より豊里町の方々が英語字幕をつけ、この映画祭に公民館からエントリーしたというお話をお聞きして、そしてそれがドイツで賞を取るなんて … それこそ映画のような、奇跡のお話に思えました。 ひとりでは難しい事も、2 人 3 人と力を合わせれば、叶う。 『ひとりじゃない』は、人の力をテーマにした作品ですが、改めて人の力の凄さを感じました。 この作品が多くの方に関心を持っていただけるよう、誰かの力になれるよう、私ももっと頑張りたいです。」と喜びと、その意義の大きさを語った。

なお映画『ひとりじゃない』はロシアでの上映も決定。 9 月 14 日から 22 日までロシアのアムール地方・プラベシチェンスコ市で開催される『アムールの秋映画祭』の中のユーラシア国際映画祭「日本シネマデイズ」で上映予定。 日本の地方の町から発信された映画が、世界の人々に共感の輪を広げ続けている。

(Oricon = 5-24-19)

震災で家族失った男性の孤独と希望 映画「ひとりじゃない」

東日本大震災で家族を亡くした中年男性の孤独と希望を描いた映画「ひとりじゃない」が 23 日、大阪市阿倍野区で上映される。 地域での孤立・孤独死防止のメッセージを広く発信しようと、宮城県登米(とめ)市豊里町の住民らが、プロの映画スタッフや俳優と共に制作。 阪神・淡路大震災や東日本大震災などでも相次いだ事例を踏まえ、見守られる側の心情に迫っており、4 月にドイツで開かれた国際映像コンペ「ワールドメディアフェスティバル」では銀賞を受賞した。

■ 震災で家族失い … 旅する女性と出会い

津波で妻と 2 人の子どもを失い、同県石巻市から内陸部の登米市に移住した 1 人暮らしの中年男性が主人公。 生きる意味を見いだせずにいた時、自転車で旅行中の若い女性と知り合い、亡くなった娘と同じ年頃の女性と心を通わせる中で、前を向いて生きようとする。

孤立・孤独死防止を目指す映画作りは、住民組織の豊里コミュニティ推進協議会で集落支援員を務める川谷清一さん (62) が発案。 川谷さんはもともと大阪府立高校の事務長だったが、東日本大震災の被災地支援のため退職、移住した。 災害公営住宅の見守り活動で誰にもみとられずに亡くなった男性を発見したことや、大阪にいた頃に自身の叔母も同様の状況で亡くなっていた経験が基になった。

地方創生に向けた助成金事業に採択され、同協議会が制作委員会を組織。 映画監督の鐘江(かねがえ)稔さん、兵庫県尼崎市出身の映像監督倉田修次さんらが制作スタッフとなり、主役を務めた俳優の稲森誠さん、小林涼子さん、歌手のさとう宗幸さんらも趣旨に賛同し、手弁当で出演した。 撮影は昨年 9 月に登米市豊里町などであり、住民らが宿泊先や食事の用意をしたほか、エキストラとして出演した。

映画は 40 分。 無料上映会を開く団体などに DVD を貸し出しており、国際映像コンペでの受賞もあって、上映希望が相次いでいるという。 川谷さんは「映画を見た一人一人が、できる範囲で周囲とつながっていってくれたら」、脚本と編集も担った鐘江監督は「人はほんのちょっとしたきっかけで、孤立から抜け出せることを感じてほしい」と話す。(石崎勝伸)

(神戸新聞 = 5-21-19)

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