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上質な着物に目を向けて ポリ製人気、和装離れ 苦境の西陣織

京都でポリエステル製の着物のレンタル店が急増している。 鮮やかな柄で安く、洗濯できるので人気だ。 街中に着物姿の人が増える一方、伝統産業の西陣織の職人は減少し、「20 年後には技術がほとんど残らないのではないか」と関係者は懸念。上質な着物にも目を向けてほしいとしている。

京都市東山区の八坂庚申堂。 カラフルな着物姿の女性が撮影のため押し寄せる。 お目当ては境内にある極彩色の小さな縫いぐるみが連なった「くくり猿」。 写真共有アプリ「インスタグラム」に公開された写真が話題となり人気が出た。

女性らの着物はほとんどがレンタルで、軽くてクリーニングに出せるポリエステル製。 出版社「きものと宝飾社(中京区)」によると、京都市にレンタル着物店は約 250 軒あり、10 年前に比べて 2 倍近くになった。 外国人観光客が増えたことも背景にあるという。

伝統的な友禅染などに比べ、ポリエステルの着物は派手であることが多く、「京都の風情が失われるのではないか」と業界関係者の中には批判する人もいる。 一方、伝統産業は厳しい局面だ。 今年 3 月、ツイッターに投稿された「給与なし、仕事保証なし」という西陣織職人の求人が話題になった。 ブラック企業という批判も寄せられたが、現場には切実な事情がある。

西陣織の製造元「紫紘(上京区)」では、嫁入り道具として着物を仕立てる風習が廃れたこともあり、売り上げは 30 年前に比べ約 10 分の 1 に。 それに伴い、織機の台数も減らした。 職人は 60 - 70 代が中心。 ベテラン職人の小林陽(あきら)さん (711) は「技術は話すだけでは分からない部分がある。 自分たちが生きているうちに教えないと。 20 年後は難しいだろう。」と危ぶんだ。

そうした中、ワンランク上の着物に目を向けてもらおうとレンタル業界にも新しい動きが出てきた。 着物問屋のレンタル部門「京裳庵(きょうしょうあん)」では今年から、愛好家が着なくなった着物を着付けて、そのまま持ち帰ってもらうサービスを始めた。 本業は織物の売買だが和装離れが進み、「このままでは文化が消えてしまう」と 8 年前から貸出業を開始。

修学旅行生を呼び込むなど地道な普及活動の結果、ポリエステルでは物足りないという利用客が出てきた。 店長の内藤雅美さん (32) は「レンタルではなく、最終的には自分の着物を持つことにつながれば」と期待している。

(毎日新聞 = 6-8-17)

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