「きものの出張着付け」 元に戻る一覧に戻る(k438) ← (k437) → (k436)

小学卒業式、増える袴姿 華美な衣装、自粛呼び掛けも

3 月は卒業式シーズン。 各地の小学校で、和装で式に出席する女子児童が増えている。 大学では広く見掛けるが、小学校でも昨年は、卒業生の 3 分の 2 が袴姿という例も。 ただ、保護者にとっては費用負担が悩みのタネだ。 経済的事情などで着られない児童への配慮などから、一部地域では、学校側が自粛を求めるケースが出ている。

「袴はピンクなどの明るめの色使いが人気。 名古屋市内に続き、市周辺地域へのレンタル件数が急激に増えました。」 「総合貸衣裳館 Mai」のブランドで、愛知県で 7 店の貸衣装店兼写真スタジオを運営する「ティーブライド(愛知県豊明市)」の水野真二・販促企画部長は、需要の高まりに手応えを話す。

今シーズン、小学校の卒業生向けに着物や袴の貸し出しを予定しているのは、約千件に上る。 子ども向けセットを本格的にそろえたのは 2014 年。 貸出件数は 15 年が約 5 百件、16 年は 8 百件と年を追うごとに増えている。 着物と袴のセットの貸出料は、約 2 万 - 3 万円。 着付け代は別途必要だ。

名古屋市天白区の「フォトスタジオアクエリアス」は、着物と袴の約百セットを用意。 名古屋市の小学校の卒業式がある今月 16 日は、8 割ほど貸し出しの予約が入っている。 レンタルを始めた 12 年以来、年々引き合いが増え、本年度は子どもが 6 年生に進級して間もない 4、5 月に予約を入れる保護者が多かった。 「5 年生の時に、卒業する 6 年生の袴姿を見て、私も着たいと希望されるお子さんも多い」と同店。 競技かるたが題材の人気漫画「ちはやふる」などの影響もあるという。

一方、愛知県半田市教育委員会によると、市内の多くの小学校は昨年 6 月、保護者に、華美な衣装と袴姿の自粛を呼び掛けた。 昨年 3 月の卒業式で、小学校によっては女子の 3 分の 2 が袴を着用。 年々、和装が増えていることが教育委員会で話題となり、各校の判断で文書を出した。

「『着せたくてもできない。 仲間外れにされないか。』という保護者の声もある。 着慣れないため裾を踏んで転ぶ危険性もある。」と、教育委員会の担当者は話す。 同様の呼び掛けは同県武豊町でも行われている。 岐阜県のある小学校に通う 6 年生女児の保護者は今年 2 月、学校側から袴姿の自粛を口頭で求められた。 「娘のために着物と袴を買った。 今さら自粛と言われても。」と当惑している。

◆ 親も大学で着用

<文化服装学院の朝日真専任教授(西洋服装史)の話> 大学の卒業式で袴姿が広がったのが 1990 年代。 そのときに経験した世代が親になり、和装への抵抗感が減っていることに加え、日本文化を再評価する流れもある。 少子化で、一人当たりにお金をかけやすくなった面もあるのでは。 (佐橋大)

(中日新聞 = 3-9-17)

inserted by FC2 system