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中国、民主化への道? (120)

一般大衆も知識人も、一派ひとからげで体制の管理下に置こうとする動き、全ての独裁体制が試みた流れです。 ただ、歴史は既にその回答を示しています。

習近平の「デジタル文化大革命」が始まる

八方ふさがりの習近平政権、徹底的な民衆管理へ

ここに来て、なんだか中国の様子がおかしい。 これまでも中国の行動はかなり強引であり国際的な常識を無視するものが多かったが、それが加速している。 変なニュースを耳にするようになった。 日本でも名前が知れた女優のファン・ビンビンさんが 3 カ月も消息不明になった。 米国に亡命した、犯罪に巻き込まれた、などといった噂が流れたが、蓋をあけて見れば税務当局が脱税容疑で彼女を拘束していた。

それが話題になっている最中に、今度は中国出身の孟宏偉 ICPO (国際刑事警察機構)総裁が行方不明になった。 その後、北京空港で当局に身柄を拘束されたことが判明した。 ある人が突然当局に拘束され、その事実がなかなか公表されない。 これは中国では頻繁に起こることである。 ただ、これまでのところ、中国政府が現代の「神隠し」のようなことを行っている状況を、世界の人々が知ることはなかった。

しかし、ファン・ビンビンさんは世界に名の知れた女優であり、また孟宏偉氏が国際機関のトップであったことから、中国当局が行う超法規的かつ野蛮な行為が、広く世界に知れ渡ってしまった。 こんなことをして、なんの得になるのだろうか。 孟宏偉氏はフランスを発って北京で拘束されたこともあり、フランスで大きな問題になっている。 その結果、日本や東アジアの国々だけでなく中国から離れた国に住む人々も、中国のやり方に疑念を抱くようになった。

習近平政権は経済も外交も失敗だらけ

なぜ中国は世界の評判をも省みずに、このような強引なことを行うのであろうか。 私はそれを中国が再び文化大革命に走る前兆と考える。 では、なぜ今、文化大革命を行わなければならないのであろうか。 よく知られているように、中国共産党のレジデマシー(統治の正統性)は経済成長にあった。 「豊かになるのだから、黙って共産党に従え」というわけだ。 それが実現している間、人々は共産党の支配を受け入れてきた。 農民戸籍など格差の問題もあるが、経済が成長すれば自然に解決されると思っていた。

しかし、習近平が総書記になった頃から経済成長に陰りが見え始めた。 それに対応して、どの国でも行うことだが、景気のテコ入れのために巨額の公共投資を行った。 だが、それは効率のよい投資とは言えず、地方政府と国有企業は巨額の負債を抱え込んでしまった。 現在、その処理を誤ればバブルを崩壊させかねない事態に至っている。

もう 1 つ。 習近平政権は「中国の夢」をスローガンに、一帯一路政策を推し進めたり AIIB などを設立することによって、民衆の目を海外に向けようとして来た。 しかし、マレーシアやモルディブに反中政権ができるなど、それが失敗だったことが明らかになり始めた。 そして、南シナ海などでの強引な膨張政策は、あろうことか米国との深刻な対立を招いてしまった。 習近平の対外政策は失敗だらけである。

経済もダメなら外交もダメ。 格差も解消されない。 それでは民衆は不満を持つ。 そんな状況で残された方法は、力ずくで民衆を押さえることしかない。 今回の海外への影響を無視した措置には、そのような危機感がにじみ出ている。 そして、習近平の思考方法もにじみ出ている。 それが文化大革命である。

中国人も気がついていない監視の実態

習近平が総書記になってから、教科書における文化大革命に対する記述が変化したことはよく知られている。 否定的な文言が消えて、扱いが小さくなった。 文革によって父親である習仲勲が失脚し、自身も陝西省の田舎に下放され苦労したのに、なぜか習近平は文化大革命を嫌悪していない。 ちっとドンくさくい習近平は下放で経験した田舎暮らしや、質素を旨とする生き方が嫌いではなかったようだ。 だから、派手な生活をおくるファン・ビンビンさんが許せなかったのかもしれない。

経済が低迷し対外膨張政策も上手く行かない中で、習近平は第 2 の文化大革命を開始した。 徹底的に民衆を管理し、文句を一切言わせない体制を作ろうとしている。 それは経済成長よりも統制に重きを置いた社会である。 ケ小平の始めた改革開放路線の真逆。 だから文化大革命なのだ。 今度の文化大革命は「デジタル文化大革命」になる。 デジタル技術がフルに活用される。 既にグレート・ファイア・ウォールを築いて海外からの情報を徹底的に遮断し、かつ膨大な数の監視カメラを設置して国民の監視を強めている。

習近平政権は新疆ウイグル自治区に対して、実験的に「デジタル文化大革命」を開始した。 そこでは、住民は当局によって徹底的に監視され、少しでもおかしな行動があると、徹底的に「習近平思想」の再教育が行われる。 このことは日本ではあまり報道されていないが、欧米では新疆ウイグルでの人権侵害は大きなニュースになっている。

情報が管理されているために、中国人自身がこのような事実を知らない。 日本人は上海などに滞在する日本人を通じて中国を知ることが多いが、中国に住む日本人は、案外、中国についての情報を持っていない。 中国の体制は、北京や上海に住む人々(特権階級)が利益を享受するように作られているので、そこで地方や少数民族の不満を聞くことはないからだ。

歴史はまたもや繰り返されるのか

今後、米国との貿易戦争によって、上海や深センなど経済が順調に発展してきた地域でもバブルが崩壊したり失業率が上昇したりし始めると、民衆の不満を力で抑えるために、現在新疆ウイグルで行われているような徹底的な管理が行われるようになろう。 共産党体制に文句を言う者は、「習近平思想」を学習しなければならなくなる。 我々が、ケ小平が始めた改革開放路線以降ここ 40 年ほど見て来た中国とは、大きく異なる中国が出現する。

中国は国が大きいために中央の力が少しでも衰えると、地方が中央の命令に服さなくなる。 それを防ぐために、どの王朝も衰えが見え始めると反体制派に対して過酷な取り締まりを行う。 人々はそれに一層反発するために、国内は混乱状態に陥り、そして分裂する。 それをまた偉大な英雄が統一する。 これが中国史の基本である。 習近平政権は、民衆の不満を抑えるために強権を用い始めた。 それは中国共産党支配の終わりの始まりと言ってよい。 (川島博之)

- JB Press 2018 年 10 月 17 日 -


中国、強まる言論抑圧 25 年続く改革派の拠点、閉鎖か

中国で改革派経済学者らの拠点となってきた独立シンクタンク「天則経済研究所」が、閉鎖の危機に直面している。 今年に入り、北京市内の事務所が封鎖され、活動が困難に。 運営会社の営業許可も取り消される可能性が高まっている。

17 日、北京市郊外の役所で運営会社の許可を取り消すかどうかの公聴会が 2 時間、非公開で開かれた。 当局は会社が設立時に許可を得ていない「教育活動」をしていると主張し、研究所側が学術的な意見交換であり、「教育活動には当たらない」と反論した。 研究所は、政府系シンクタンク中国社会科学院を退職した改革派の経済学者、茅于軾さんらが 1993 年に設立。 約 25 年にわたり、市場経済や民主主義、法治の推進を訴える経済人らの拠点となってきた。 (北京 = 延与光貞)

- 朝日新聞 2018 年 10 月 18 日 -


「無髪 OK、無法 NG」弁護士妻ら、丸刈りで抗議 中国

2015 年 7 月に中国の人権派の弁護士が一斉に拘束された事件で、約 3 年半たっても裁判が開かれない弁護士の妻ら 4 人が 17 日、そろって頭を丸めて裁判所に抗議した。 中国語で「無髪」と「無法」は同じ「ウーファー」という発音のため、「無髪はいいが、無法はダメ」とユーモア精神を発揮しながら長期拘束の異常さを訴えた。 丸刈りにしたのは、国家政権転覆罪に問われた北京の王全璋弁護士 (42) の妻、李文足さん (33) ら 4 人。最初に拘束された人たちの裁判はほぼ終わったが、昨年 2 月に天津で起訴された王氏の裁判は開かれず、家族が依頼した弁護人とも面会できていない。

4 人は屋外で気温 5 度の寒さの中、順番にバリカンで頭髪を丸刈りにした後、「法に従って裁判を開いて」と最高人民法院(最高裁に相当)に 31 回目の抗議に行ったが、門前払いにされた。 李さんは「裁判官が法律の期限を過ぎても裁判を開かないことに失望しているが、あきらめず訴えたい」と話した。 (北京 = 延与光貞)

- 朝日新聞 2018 年 12 月 17 日 -

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